ダブル・ファンタジー
Double Fantasy

1980
John Lennon
Yoko Ono

 この前、某紙で、後世に残したいジョン・レノンの曲ベスト3みたいなアンケートが載っていたが、1位が「イマジン」というのはわかるけれども、2位の「スタンド・バイ・ミー」というのが全然わかんねえ。だってこれはベン・E・キングの歌でしょーが。それにこの曲はベン・E・キングが歌ってる方が良いのにね。3位は「ハッピークリスマス/戦争は終わった」だとさ。

 僕だったら「スターティング・オーバー」、「ビューティフル・ボーイ」、「ウーマン」の3曲を選ぶだろうな。3曲ともこのアルバムに収録されている曲だ。ジョンにとっては長いブランクをおいての新曲だった。

 ジョン・レノンの命日に毎年日本で開催されるトリビュートツアーにさきがけて、僕もその予習のため、久しぶりにこのアルバムを聴いてみた。

 このアルバムは、あろうことか、オノ・ヨーコの曲とジョン・レノンの曲がごちゃごちゃに入っていて、両者のスタイルがまるで違うため、まとまりでいえば最悪だ。オノ・ヨーコの曲は、それだけまとまったものを聴けばなかなか味があり、決して悪くはないのだが、ジョン・レノンの曲と曲の合間に聴いてしまうと、どうしても引けを取ってしまうので、場違いもはなはだしい。しかし、さきほどあげた3曲が入っているから、これは買うに値する一枚になっている。

 「スターティング・オーバー」はこれぞロックリズムの真骨頂。たしか日本のドラマで使われたと記憶する。曲の出だしが最高。この躍動感は唯一無二。なんなんだ、このかっこよさは! この曲に浸っていたら、次の曲でいきなりオノ・ヨーコに「あなた、抱いてよ」と日本語のエロい声でささやかれて気分は台無しである。ここでいきなり飛ばしたい衝動に駆られるが、ジョンが惚れた女だ。飛ばさず聴こうぜ。

 「ビューティフル・ボーイ」は映画『陽のあたる教室』で替え歌で歌われて、僕はそこから好きになった。これも出だしの雰囲気がグッド。ゆったりとした優しい曲だ。こういう幼少にタイムバックしたかのような声のジョンはビートルズ時代にはなかったものだ。「ウーマン」はアルバム発表当時のヒット曲で、誰しも一度は聴いたことがあるだろう、耳に残る曲だ。このアルバムからは、他のジョン・レノンのアルバムにはない、人としての優しさを感じる。