ファン・ハウス
Fun House
1970
The Stooges

 かなりカルトな名盤だ。この当時の音楽でいえば、MC5、ドアーズ、ラヴなどに通じるサイケデリックかつヘヴィなロック・アルバムであるといえる。とにかくイギー・ポップの歌声が凄いの一言に尽きる。完璧に狂ってるんじゃないかと思えるほど、イッちゃってるアルバムだ。誰かがこれのレビューで「このアルバムを聴くと死にます」と書いていたのを読んだことがあるが、確かに納得である。僕も色々なロックを聴いてきたが、これほどイッちゃってる歌声を聴いたのはこれが生まれて初めてである。ジム・モリスンほどのエクスタシーはないし、ルー・リードほどの浮遊感があるわけではないが、イギー・ポップのパフォーマンスは本当に狂ったようである。ただ無茶苦茶大声で歌うという類ではなく、くどいようだが、本当にイッちゃっているように感じてしまうからその凄まじさは尋常ではない。特に「1970」の歌声は鬼気迫るものがあるし、「Dirt」のねちっこさときたらジミ・ヘンドリックスを凌ぐほどだ。全曲通して聴くと、聴き終わったころにはかなりグッタリ。ヘヴィさでいえば史上ベスト・テンに必ずやランク・インされるであろう。ジャンルでいえば何だろうか。一言で言えば「サイケデリック」なのだが、その一言では片づけられないし、基本的な型という型のないフリー・セッション的な内容である。ギター・ソロなど聴いていると当時のハード・ロックの要素もあれば、その後のヘヴィ・メタルの基板を築いているといっても過言ではない。パフォーマンス的な面では、なんといっても最も貢献度が高いのはパンク・シーンにその後与えた影響力であろう。まだパンクの型は確立してはいないが、しかし誰もが「パンクの第一号」として、ストゥージズの名をあげるのもわかる。

バンド・アルバム・インデックス
Raw Power
Stooges,The