ガービッジは、僕にとっては90年代後期ではレディオヘッドと共に特別ひいきにしているバンドである。ニルヴァーナの「ネヴァーマインド」他をプロデュースしたブッチ・ヴィグを含むスティーヴ、デュークら3人の中年オヤジ(ドラム・ギター・ベース)が自分たちのバンドに、若いギャル、シャーリー・マンソンをボーカルにひっつけて生まれ変わらせたバンドである。90年代後半に入っていきなり話題を呼び、まだ2枚しかアルバムを出していなかったが、当時は最も大衆受けしたロック・バンドのひとつだった。
ジャンルはオルタナの流れをくむが、サンプル、ループ、ノイズなどを駆使しているため、エレクトロニカの要素も多く含む。ブッチのドラムはさながら人間シーケンサーである。その音楽に、派手なポップ・ビジュアルで攻めるシャーリーが加わって、完璧にかためているため、非の打ち所のないバンドになっている。
あらゆるユニークな音がつまった「Temptation Waits」は、たしかに打ち込みっぽい曲であるが、音の作り方・崩し方がいいのと、テンポが心地よいのと、シャーリーの声がロックぽいのに癒し効果もあって可愛くて、いいとこづくめで僕自身かなりこの曲には惚れ込んでいる。
ここから話がずれるが、彼らの2枚目にあたる同作は、ロックにはあまり縁がないグラミー賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされたが(いかにもグラミーが好きそうなつかみやすさがあるしね)、その年の受賞候補者はガービッジ以外は全員女性ミュージシャンだった。ここでガービッジだけが男性ミュージシャンとして報道されていたのが、僕のロックの見方を大きく変えるきっかけになった。あの頃の僕にとってロックとはボーカルがすべてだったが、ガービッジのようにボーカルがたとえ女性でも、音楽的ブレインとなる人物が男性ミュージシャンならば、それは男バンド扱いになることを学んだ。それがすなわち「ロックは演奏で決まる」という僕の持論に発展していったわけだ。 |