大晦日好例の紅白歌合戦を見た。日本の歴史ある由緒正しい長寿番組なので、なんだかすごく安心感があるものである。実は僕はこの番組をちゃんと見たのは去年が初めてだった。正直な感想を言わせてもらうと、日本の音楽レベルの低さにがっかりした。日本人として恥ずかしくもある。もともと僕は歌謡曲や産業ポップが好きじゃなかったせいもあるが、裏を返せば、エレファント・カシマシのような本格的なロック・バンドは紅白のような番組には出ないということになるのだろうか。一方でゆずやさだまさしらシンガーソングライターが出ていたのは唯一の救いだった。
 天童よしみや氷川きよしの声は好きだし、日本の伝統音楽である演歌は決して嫌いではないのだが、僕がロックの定義としている「自分の信念をもって作曲する」と「自分で演奏する」のいずれにも当てはまらないため、どうしても認めたくない気持ちがある。
 紅白は演歌とJ-POPが同等に扱われているところが良い。こういう機会がなければ、J-POPファンは演歌を聴かないだろうし、演歌ファンはJ-POPや流行に関して無知なままだったろう。そうなると紅白は良心的な番組である。男と女の対決という普遍的なテーマも的を射ており、お茶の間でみかんを食べながら見ようという気にさせる。
 僕が納得できないのは、これが明らかに歌主体の番組で、演奏に関してはまったく重要視されていないことである。グラミー賞の授賞式と比べてみると一目瞭然である。紅白ではどの歌手の歌も同じような演奏に聞こえてくる。もっぱら背景を飾り立てる戦術に走っている気がする。
 字幕スーパーで歌詞を表示しているのも気になった。外国では有り得ないことである。字幕が入ることで、ライブとしての価値観が落ちるし、歌に気が行くため演奏を聴く楽しみもなくなる。純粋に歌を歌うことの楽しさを教えられるところでは、ゴスペルにも通じるものがあるが、日本人は声量が少ないため、どちらかというとルックスを重視する傾向も否めない。外国では絶対に干されてしまうことだろう。
 しかし日本にはかつて坂本九という偉大なスターがいた。だから僕は望みは捨ててはいないのだ。(2005/1/8)