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Aqualung
1971
Jethro Tull
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68年から73年にかけてのジェスロ・タルが一番面白かった。「アクアラング」はそのちょうど中間の71年の作品だ。完成度の高さでは「ジェラルドの汚れなき世界」や「スタンド・アップ」が上だろうし、演奏の技術力では「日曜日の印象」に軍配をあげたいところだが、「アクアラング」は音が美しく、物語的で、平均的によくまとまっており、時にはヘヴィな顔も見せる。まさに入門としてはベストだろう。
これが他の作品よりも評価が高いのは、ちょうどその時期流行っていたプログレの流れを直接くんでいるからだ。このときリーダーのイアン・アンダーソンは24歳だった。
実は僕も「アクアラング」から入った口である。しかし僕はジャケット・デザインに電撃を打たれて衝動買いしただけで、その時はジェスロ・タルのことは全く知らなかった。僕がジャケットを見ただけで何の知識もなくとにかく試しに買ってみたアルバムはこれが初めてのことだ。後々からジェスロ・タルというバンドがすごいバンドであることを知り、僕は一気に好きになった。
とにかく僕の第一印象はフルートの音が凄いと思ったことだ。世界広しといえど、ここまで激しくフルートを吹くバンドはジェスロ・タルくらいなものである。そのフルートは僕が今まで抱いていたフルートの概念を思い切り覆したものだった。すごくイギリス的なのだが、しかしいぶし銀のような渋さがある。「Cross-Eyed
Mary」の2:30からのフルートは鳥肌もの。「Up To Me」のフルートのフレーズも一度聴いたら忘れられない。フルートとエレキギターとの愛称も抜群である。またイアンのガラガラ声も実に味わい深く、フルートとマッチしている。
とくに捨て曲はなく、全曲が奇跡的なほどに素晴らしいが、あえて好きな曲を選べば、圧倒的な構成の「My God」、そして重厚なサウンドの「Locomotive
Breath」だ。「Locomotive Breath」の邦題は「蒸気機関車のあえぎ」で、良いタイトルだと思う。 |
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