ジェスロ・タル
ジェスロ・タル

 『アルマゲドン』という映画があった。ただの工場のおっさんたちが、地球を救うために宇宙飛行士になって隕石落下を食い止めるお話である。この映画には個性的な宇宙飛行士が登場する。その一人にすごくマニアックな男がいて、こいつのセリフがなかなか面白い。「俺にとって我慢ならないのは、ジェスロ・タルってバンドを誰も知らないことだ」。ロック・マニアにとっては「うんうん」と納得させる言葉。僕もジェスロ・タルのファンなので、このシーンにはバカ受けした。ジェスロ・タルはデビュー当時は人気投票でビートルズに次いで第2位にランクインしたほど、ロック・マニアにとっては決して抜きにして語れない大物バンドである。ヒットチャートでも何度か全英・全米の1位の座についたこともあったのに、現在までずっと現役で活動しているのに、これを誰も知らないのは確かに変だよな。イギリスを代表するハード・ロック・グループでもあり、グラミー賞に新たに親切されたハード・ロック/ヘヴィ・メタル部門でもアメリカのボン・ジョヴィ、ガンズ&ローゼスを抑えて栄えある最初の受賞者となったことも覚えておいてもらいたい。また、『ジェラルドの汚れなき世界』ではアルバム1枚で43分の曲を1曲だけ収録するという無謀ともいえる挑戦に見事に成功した唯一のバンドでもある。少なくとも70年代前半までは彼らはローリング・ストーンズキンクスよりも格が上だといえる時期があった。
 ジェスロ・タルといえば、断然イアン・アンダーソンのフルートである。数々のメンバーチェンジを重ねながらも(一時期エディ・ジョブスンがいたことも!)、イアン・アンダーソンのフルートを中心としたサウンド作りは今も昔も変わらない。無数にあるロック・バンドの中でも、フルートを使ってここまで派手に盛り上がれるのはイアン・アンダーソン一人しかおるまい。他のバンドにない個性があったからこそ、ジェスロ・タルはシーンを勝ち抜くことができた。
 フルートというと、小鳥のさえずりのような美しい音色を想像するだろうが、ジェスロ・タルはそのフルートを使って実にヘヴィな演奏をしたものである。わざと音をかすれさせたり、フルートを吹きながら叫び声をあげたり。そしてなんといっても一番目立っていたのは片足をあげて演奏していたことだ。そのためイアン・アンダーソンは「狂気のフラミンゴ」と呼ばれた。

 僕もついに先日(2005/5/12)、渋谷公会堂で本物のジェスロ・タルのライヴを目の当たりにした。初めて生で見るイアンのライブ・パフォーマンスに感動しまくりである。ハード・ロック・バンドなのに、お客さんは全員座ったまま、バンドの演奏に耳を傾けてじっくりと聴いていた。お客さんはネクタイ姿のサラリーマンばかり(僕もその一人だったけどさ)。この日のラインナップはイアン・アンダーソン(flute)、マーティン・バレ(g)、ジョナサン・ノイス(b)、ドーン・ペリー(dr)、アンドリュー・ギディングス(key)。もちろんセッション・ミュージシャンは加えずに、すべての曲を5人だけで演奏していた。僕はスタジオ盤では多重録音していた音をライブではどう演奏するのか心配していたが、キーボードで色々な音を代用していたので、雰囲気を殺ぐことなく、フルートの音も一段と引き立って聴こえてきた。
 イアンももう55歳のおっさんになっていたが、片足立ちはスムーズ、まるでバレエのようだった。イアンの振り付けは、どこかしらおどけたような感じで、うまく例えるならば、それはまるで道化師のようだった。そりゃもう若いころからすでに老人の扮装で演奏していたバンドだ。ちっともキザっぽくなく、自分たちを戯画化してみせているところに彼らの強さがある。
 ライブで一番の盛り上がりを見せた曲は、やはり「ブーレ」だった。この曲には歌がないが、イアンのフルートの魔力が思う存分に発揮されている。まるで狂ったかのようにフルートを吹き鳴らすイアンの姿を見て観客は大喝采。観客がジェスロ・タルのライブで一番期待しているところはやはりフルートだったということだ。
 もうひとつ盛り上がったのが名盤『アクアラング』からの1曲「蒸気機関車のあえぎ」。ピアノ・ソロから入り、ジャカジャカギターをかき鳴らして一気に畳みかけるホットなナンバーである。この日のライブでは名盤『アクアラング』の曲を全曲披露してくれて、『アクアラング』からジェスロ・タル・ファンになった僕としては感激しきりの一日であった。でもできればずっと立って聴きたかったな。だってこれは紛れもないハード・ロックなんですぜ。
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イアン・アンダーソン(flute)
マーティン・バレ(g)
グレン・コーニック(b)
クライヴ・バンカー (dr)
ジョン・エヴァンス(key)



This Was (68)
Stand Up (69)
Benefit (70)
Aqualung (71)
Thick As A Brick (72)
A Passion Play (73)
Warchild (74)
Minstrel In The Gallery (75)
Too Old To Rock'n Roll: Too Young To Die! (76)
Songs From The Wood (77)
Heavy Horses (78)
Stormwatch (79)
"A" (80)
Broadsword And The Beast (52)
Under Wraps (84)
Crest Of A Knave (87)
Rock Island (89)
Catfish Rising (91)
Roots To Branches (95)
Dot Com (99)

【Live Album】
Live Bursting Out (78)
A Little Light Music (92)

【Compilation Album】
Living In The Past (72)
Night Cap (93)

 


アクアラング
Aqualang