ウィッシュボーン・アッシュのサード・アルバムにして最高傑作。評価が厳しいとされるメロディ・メーカー誌による年間最優秀アルバムに選出され、その内容は折り紙付き。僕にとっても愛すべき名盤で、これはビートルズの「アビイ・ロード」と共に、永遠にそばに置いておきたいアルバムのひとつである。
ウィッシュボーン・アッシュのアルバムはハードなサウンドにして、どれもすこぶる美しい輝きを持つが、とくに本作は別格。1作目のドラマティックなギター・サウンドと、2作目のもの悲しさが融合し、中世ヨーロッパの雰囲気を醸成して、究極ともいえるブリティッシュ・ハード・ロック・サウンドの様式美を確立している。それはクラシック風でもジャズ寄りでもなく、紛れもなくロックから生まれたロック・サウンドであったことを評価したい。
ヒプノシスによるジャケット・デザインといい、歌詞といい、メロディといい、そしてなにより4人の演奏が優れ、プログレッシブ・ロック顔負けのコンセプト・アルバムに仕上がっている。ぜひ1曲目からじっと通して聴いて、その様式美に酔いしれてもらいたい。ギター中心のバンドの場合、ギュイーンとかバリバリといった気取った装飾音で味付けするものであるが、ウィッシュボーンにそんなこしゃくなやり口は必要なかった。「Throw
Down the Sword」のラスト2分間には表現力の無限の可能性を知り、感動で鳥肌が立つ。最正統派ともいえる演奏法だが、こういうやり方でも、「かっこいい音」になるということを教えてくれた名盤だ。 |