ビートルズ
ビートルズ

 僕は人一倍嫉妬心が強い男で、過大評価されてる奴らが大嫌い。才能もないのにちやほやされている奴らが嫌いである。逆に、才能があるのに、過小評価されている人たちが僕は大好きである。だから、僕はビートルズを愛している・・・。なぜなら、ビートルズはロック史上、誰よりも過小評価されているバンドだと思うからである。たしかに名声でいえば1番かもしれないが、みんなビートルズの名前は知っていても、本当の偉大さなど何もわかっちゃいないのである。たしかに僕も昔は「けっ、何がビートルズだ」なんて言ってた一派だったが、あれは僕の単なる食わず嫌いだった。僕が最初に買ったCDはローリング・ストーンズだったため、ついビートルズに反発し、結局ビートルズの最初のアルバムを買ったのは、ほとんどのロック・バンドのCDを買い尽くした後だった。僕はクラシックもジャズもロックもなんでも聴くが、すべてをひっくるめても、我が敬愛するベートーベンやチャイコフスキーと並び、ビートルズは音楽史で最も偉大な作曲家であることを認めざるを得なくなった。それほどの衝撃だった。ビートルズは掘れば掘るほど奥が深いのである。「ビートルズの曲っていいよね」と軽く言ってる人の99%は何もわかっちゃいない。そこが、ビートルズの全アルバムを持っている男の一人として(それでもまだビートルズの偉大さを知り尽くしてないのである)、ビートルズを軽く見られるのが許せないのである。
 例えばあの忌まわしきベストアルバム「赤盤」「青盤」(選曲はジョージ)が出たせいで、ビートルズの真価はアルバムのトータルバランスであるという最重要項目を知るチャンスを逸しているのである。たいていの人は「赤盤」「青盤」を買っただけで満足して終わっている。というか「こんなもんか」で終わっている。「赤盤」「青盤」がそうした<なんちゃってビートルズ・ファン>を助長してしまったのだと思うのである。僕も海賊盤から入った口なので同じ穴のムジナなのだが、幸い僕はそこで満足せずに、1枚また1枚と、全て揃えることにしたのだから良かった。僕がアメリカを旅しているときに見付けたロックのクロニクル書では、ビートルズのページ数が他のミュージシャンよりも一番多かったし、ビートルズは「プリーズ・プリーズ・ミー」から「レット・イット・ビー」までのオリジナル全12枚のアルバムで最高評価のファイブ・スターを獲得していた。ちなみにレッド・ツェッペリンが0枚、ローリング・ストーンズが3枚程度なので、ビートルズのファイブ・スター12枚は大差である。ところが「赤盤」と「青盤」は星印は三つしかなかった。ベスト盤を買うよりは、何か1枚オリジナルを買うこと。それがロックを知る最短ルートだということを僕はビートルズに教えられたのである。ビートルズは「イエスタデイ」や「プリーズ・プリーズ・ミー」など、絶品の名曲を数多く残し、そのメロディは町中のいたるところから聞こえてくるわけだが、そのせいで、ビートルズを可愛らしいポップ・グループだという不名誉極まりない勘違いが起きている。ビートルズはたしかにポップ・ソングをもじったような曲も残したが、ビートルズが凄いといわれるのは、ありとあらゆる音楽を作ったことであるから、アイドル的な曲しか知らない人はもったいない気がする。
 ビートルズのスタイルは「スタイルを持たないこと」であった。常に実験的な精神で、誰も考えつかない全く突拍子もない大胆な音楽を作っていったのである。テープ逆回転、インド音楽の導入、アバンギャルド、ノイズ・ミュージック、ヘヴィメタル、パンク、サイケデリック、シンセサイザー音楽など、前期・中期・後期と全く雰囲気は異なり、ビートルズは絶えず突然変異を繰り返し、みるみる進化していったのだ。彼ら4人がそれぞれ作曲ができ、リード・ヴォーカルを取れることも音楽的バラエティを豊富にした。つまり曲ごとに歌っている人が違うという楽しみがある。例えばあの名曲「イエロー・サブマリン」を歌っているのはリンゴである。やたらジョン・レノンばかり神格化されている傾向が僕は好きになれないが、本当は4人が平等に目立っていて、誰一人と欠くことができない。内面をさらけ出すようにシャウトするカリスマ・ジョン。七変化する声を操り無数のヒット曲を作曲した稀代のメロディメーカー・ポール。インドでの瞑想やドラッグ体験をもとにしバンドに神秘性を加えた不遇のギタリスト・ジョージ。映画に出演するなど愛らしいキャラクターが人気を博したリンゴ。彼ら4人の個性のぶつかり合いも奇跡みたいなものだった。
 たったの7年半で、メンバー全員が20代のうちに残した功績はあまりにも大きく、その音楽的事件のひとつひとつを数え上げればきりがない。驚くことに、ビートルズは60年代のバンドでありながらも、今聴いても全く古さを感じさせない。進歩的な活動にして、この永遠の普遍性は狙っていてもできるものではない。だから、よくテレビで可愛い男の子が歌っているのを見て、「まるでビートルズみたいだ」なんて言う奴が僕は何よりもムカツクのである。僕がビートルズが誰よりも過小評価されていると思うのはそのためである。ビートルズは100%ロック・バンドなのだし、他の誰よりもロックらしいロックを体現していたロック・バンドである。ロックという言葉はビートルズのためにあるといっても良い。ビートルズの曲で「イエスタデイ」しか知らないような奴らには、ぜひとも「アイ・ウォント・ユー」でのジョンのヘヴィーな叫び声を聴かせたいものである。とにかく、ここでこの偉大なバンドのことについて云々するのがバカバカしくなってくるほど、ビートルズの評価はあらゆるところを超えてしまっている。
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ベストフィルム「ドント・レット・ミー・ダウン」(YouTube)


ジョン・レノン (g)
ポール・マッカートニー (b)
ジョージ・ハリソン (g)
リンゴ・スター (dr)



Please Please Me (63)
With The Beatles (63)
A Hard Day's Night (64)
Beatles For Sale (64)
Help! (65)
Rubber Soul (65)
Revolver (66)
Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band (67)
Magical Mystery Tour (67)
White Album (68)
Abbey Road (69)
Let It Be (70)

【Compilation】
Yellow Submarine (69)
Passed Masters Vol.1 (88)
Passed Masters Vol.2 (88)
Live At The BBC (94)
Anthology Vol.1 (95)
Anthology Vol.2 (96)
Anthology Vol.3 (96)
Let It Be...Naked (03)
Love (06)



サージェント・ペパーズ
Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band

 

「ビートルズなんでもベスト」
(僕が大昔に別サイトで書いた記事です)