Bitches Brew
1969
Miles Davis

 20世紀を代表する音楽的偉大な革命家は、ビートルズとマイルス・デイビスである。ビートルズはロックン・ロールという枠をぶち破り、あらゆる音楽を呑み込んで我が者にし、ロックを文化の域にまで高めさせたが、マイルス・デイビスもまた、ジャズの方面から、音楽の可能性を追求し続けた。

 マイルスはモダン・ジャズを世間一般に広めたジャズ界の巨人で、古くから数多くのジャズの名盤を残してきたが、ロック音楽の誕生から数年後、音楽的模索を繰り返すマイルスがついにエレキ化するときがきた。ジャズがロックにアプローチしたその答えが「ビッチェズ・ブリュー」だ。それは恐ろしくサイケデリックなクール・ロックであった。20分を超える(1) Pharaoh's Dance , (2) Bitches Brew の混沌。旋律的秩序はことごとく打ち砕かれており、果たしてこれを音楽と呼べるのか・・・。数々の論争を巻き起こし、70年代の音楽シーンは紛れもなくこれ1枚の登場によって、行き先を見失うことになる。

 この問題作の後、ロッカーとしてのマイルスの成長は、「A Tribute To Jack Johnson」、「On The Corner」に著しい。

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