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Every Good Boy Deserves Favour
1971
The Moody Blues
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プログレの世界では5本の指に入る大傑作だと断言する。僕も何回聴いたか覚えていない。不思議なことにこれは何度聴いても飽きない。今後も死ぬまで聴いていきたいと言わせるアルバム。ムーディー・ブルースのアルバムは『In
Search Of The Lost Chord』や『To Our Children's Children's
Children』が臨場感があって面白いが、長く付き合うならばこの『Every Good Boy Deserves
Favour』(邦題『童夢』)が一番だろう。これは天地創造を音楽で表現したコンセプトアルバムだ。日本ではこのアルバムからムーディー・ブルースの評価が高まった。それまで彼らはスポークン・ワード(朗読)を得意としていたため、英語の分からない日本人には入り込みにくいところがあったが、このアルバムでは音を重視しているので、日本人にもわかりやすく、言葉の意味がわからなくともその雰囲気は十分に楽しめる内容になっている。
使われている楽器はすべて5人だけで演奏しているが、音のひとつひとつが大変わかりやすい。それでいてジャケットに描かれているような崇高な魔法の世界を想像させる。
それまでのムーディー・ブルースは割とアップテンポでノリの良いイメージがあるが、今回は『Days Of Future
Passed』のスタイルに戻ったのか、楽曲は穏やかな展開である。とはいえ『Days Of Future Passed』のような切なさはなく、全体的に温かい優しさに包まれたアルバムである。じっと目を閉じて、ゆっくり身を任せて聴いているとしだいに癒されていく。
ジャスティン・ヘイワードは後のライブレパートリーとなるノリノリの「The Story In Your Eyes」と立体感ある「You
Can Never Go Home」を作曲、ギターの音だけを聴くとまさにロックしまくっている。一方ジョン・ロッジは優しさにあふれた無垢な名曲「Emily's
Song」と劇的な「One More Time To Live」を作曲。
レイ・トーマスは民族音楽風の「Our Guessing Game」と「Nice To Be Here」を作曲。フルートのアクセントはピカイチで、ベースやメロトロンとも見事に絡む。「Nice
To Be Here」は曲構成といい演奏といい実にユニークで、このアルバムの中でも特に優れた出来栄えである。
グレアム・エッジはあいかわらずビートの利いたかっこいい「After You Came」を作曲。そしてマイク・ピンダーはラストを締めくくる感動的な「My
Song」を作曲。メンバー5人各自が曲を持ち寄るところは以前までと同じだが、それでいてしっかりまとまっており、切れ目なく最後まで音が続いている。そのなだらかな流れの美しさは、至高のものである。
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