A Song For You
1972
Carpenters

 カーペンターズはカレン・カーペンター(ドラム担当)、リチャード・カーペンター(キーボード担当)のソフト・ロック・ユニットである。かつてはバンド編成を組み、ギタリストとベーシストも在籍していたが、デビュー時に兄妹デュオとなった。
 僕は昔カーペンターズが大嫌いだった。僕がクラシック音楽を聴きまくっていたちょうどその頃(当時はまだロックやポップを全く知らなかった)、カーペンターズの歌がCMやドラマでやたらと聞こえてきて、再ブームのまっただなか。試しにベスト盤でも買ってみたのだが、カバー曲だらけだし、カレンの歌声の良さがまったくわからなかった僕にとっては「なんでこんなフヌケな奴らがちやほやされるんだ」なんて思っていた。でも今は違う。僕の考えを改める気になったアルバムがここで紹介しているアルバムだ。これを聴いてからはもうカーペンターズの虜である。カレンの歌声の良さもわかるが、リチャードがリードヴォーカルを取る歌もいい。このアルバムの何が良かったのかというと、それはやっぱり結局のところは「アルバムの流れ」ということになる。実に流れがよく計算されたアルバムだと思う。この後コンセプト・アルバム的な「ナウ・アンド・ゼン」も発表し、カーペンターズの作品は、ますますアルバムの流れを意識したものになっていくが、楽曲の品質面では「ナウ・アンド・ゼン」よりもこちらの方が上だった。
 思えば僕がカーペンターズを好きになれなかったのは、ベスト盤の流れの悪さだったように思う。同じようなバラードばかり立て続けにならべられて、リチャードの歌に関しては完全無視。これでは本来のアルバムの良さが台無しである、でも、ちゃんとしたオリジナルアルバムを聴くと、バラードからアップテンポの曲まで、ちゃんとバランス良く並べてあるし、インストゥルメンタルなどもある。最初と最後の曲が同じことや、カレンのボーカル曲とリチャードのボーカル曲が交錯している構成も面白い。「A Song For You」の曲構成やサックスとオルガンの音色、「Piano Picker」のクラシカルとスイングとポップを融合させた感覚など絶品である。「Top Of The World」はソフト・ロックの最高傑作ともいえる名曲だし、トラック2から5までの一連の組曲はビートルズの「アビイ・ロード」のB面メドレーを踏襲したような形ではあるが、「Goodbye To Love」の2:20から一気に盛り上がり、ドラマチックな曲調には感動させられる。