派手なパフォーマンスで、パンクとかハード・ロックのイメージが強いフーであるが、作るアルバムで演奏される曲目は壮大なスケールのものばかり。とくに「トミー」は当時流行っていたコンセプト・アルバムを更に発展させて、1本のドラマとして展開したもので、プログレッシブ・ロック隆盛以前に、ロック・オペラという全く新しいジャンルを作り出した功績が大きい。キンクスも同時期にロック・オペラの制作に乗り出していたが、フーはこの当時、数あるライブ・イベントに積極的に参加し、常にクライマックスに「トミー」の「Pinball
Wizard」とエンディング・テーマを持ってきていため、圧倒的にインパクトがあった。また、後に巨匠ケン・ラッセルによって映画化もされたこともあり、映画ファンにおいても非常に印象深いアルバムとなっている。
目が見えず、耳も聞こえず、喋ることもできない青年が、ピンボールに自己を見いだす話。ピートの哲学感が面白いが、注目はやはり「Underture」におけるキース・ムーンの強弱のきいた流ちょうなドラム・パフォーマンスである。キースのドラムは誰にも真似できないユニークなセンスを備えているが、この1曲だけでもそれは明らかだ。 |