フー
フー

 芸達者キース・ムーンのエネルギッシュなドラム・パフォーマンスなどで一世を風靡し、パンクがまだ誕生してない頃から、すでに破壊的なパンク・ロッカーとして活躍していた古参バンドであるフーは、ビートルズローリング・ストーンズキンクスと並称される四大ロック・バンドのひとつでありながらも、今まで一度も来日しておらず、「日本でライブをやってない唯一のロック・バンド」と言われていた。そんな彼らが、2004年7月24日、結成40年目にして、ようやく日本での初ライブを実現させたのである。ファンはこの日をどれだけ待ちわびたことだろうか。僕もこの歴史的瞬間を目撃するため、横浜国際総合競技場へと出向いた。初めて生で見るピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーがなんと渋いことか。2人ともだいぶ髪の毛が薄くなってるのだが、それなのになんなんだこのかっこよさは。少しも親父臭さがなく、サングラスを決め込んで、今なおフーはモッズ(ビート派の若者)で居続けていたのだ。

 フーといえば、ピートがギターを弾きながら飛び跳ねたり、右腕をぐるんぐるんと回すパフォーマンスが有名である。僕は「こんなのどこがいいのだろうか?」と昔から疑問に思っていたのだが、実際に目の当たりにして、初めてその意味がわかった。腕をオーバーに回すことで「そこにフーがいる」という実感が得られ、会場がドッと盛り上がるのである。ロジャーがマイクをカウボーイのようにびゅんびゅん振り回したときの歓声も凄まじかった。映画「ウッドストック」など、いつも映像で何度も見てきたことを目の前でやられると、思わず感動で涙が出そうになった。彼らはこのスタイルを30年前からずっと変えなかったわけだが、これは彼らにとっては大いなる存在アピールだったのだ。こればかりは実際に生で見ることに価値があるのであって、そうした意味で、やはりフーは一流のライブ・バンドだと実感させられた。

 初となる日本公演では、他にもポール・ウェラーやエアロスミスなど、多数のバンドが同じステージに立って演奏を披露したが、観客の盛り上げ方でいえば、フーが断トツにうまかった。さすがはベテランで、サービス精神たっぷりで、見せ方をわきまえている。とくに「Won't Get Fooled Again」のパフォーマンスは圧巻だった。演奏の途中、ピクリとも動かず、死んだように棒立ち状態になるロジャー。その間にピートの演奏はしだいに高揚していき、それが最高潮に達したとき、ロジャーは強烈なシャウトと共に息を吹き返す。まさに鳥肌ものの興奮がそこにあった。アンコールでは名曲「Tommy」を披露。ファンたちは「これが聴きたかったんだ!」とヒートアップ。最後にはピートが例によって、闘牛士が闘牛を剣で刺し殺すように、ギターをぶっ壊してエンディング。ファンは大感激であった。これからも、フーはこのスタイルを維持していってもらいたいと思う。そこがフーのいいところだから。
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ベストフィルム「マイ・ジェネレーション」(モンタレーから)(YouTube)


ピート・タウンゼント(g)
ロジャー・ダルトリー(vo)
ジョン・エントウィッスル(b)
キース・ムーン(dr)



My Generation (65)
A Quick One (66)
Sell Out (67)
Tommy (69)
Who's Next (71)
Quadrophenia (73)
Odds And Sods (74)
The Who By Numbers (75)
Who Are You (78)
Face Dances (81)
It's Hard (82)
Endless Wire (06)

【Live Album】
Magic Bus (68)
Live At Leeds (70)
The Kids Are Alright (79)
Who's Last (84)
Join Together (90)



トミー
Tommy