某雑誌のポール・マッカートニーのインタビュー記事を読んでいて気づいたことを書かせてもらう。
 インタビューでポールはたいへん興味深いことを言っていた。なんと彼は自分の曲を聴かないというのである。ビートルズやウィングスとして数々のヒット曲を放ってきたメロディメーカーでありながら、昔の自分の曲を聴かないとは、意外な気もする。しかし、それもわからないでもない。僕も執筆活動を続けて5年になるが、昔書いた文章は怖くて読む気になれないのである。ポールが自分の曲を聴かないのは、僕と同じ理由なのかもしれない。
 以前、僕はある俳優にインタビューしたことがあるが、彼も自分の姿を見るのが怖くて、出演したドラマを見ることができないという。何年も連載を続けている漫画家の絵が第1話の頃と筆致が変わっていたり、話のディテールに差異があるのも、おそらく昔の作品を見ないからではないだろうか。おそらく彼らにとっては、今の自分を高めることの方が大事なのだろう。
 ポール・マッカートニーは、常にスタイルを変えてきた音楽界のピカソであったが、毎回作風を変えてきたのは、そういう刹那的な性格のお陰なのかなとふと思ったりもした。なんにせよポールが天才だったことは紛れもない事実なのだが。(2004/12/11)