死滅遊戯
Amused To Death
1992
Roger Waters

 ロジャー・ウォーターズのピンク・フロイド脱退後のソロ3作目。「ザ・ウォール」「ファイナル・カット」の流れをくむコンセプト・アルバムで、CDのランニング・タイム・キャバの中で、丸一枚連続した1曲の作品として作曲。虫の鳴き声や鳥のさえずりなど、ロジャーお得意の自然音も作品全編に渡って配され、「吹けよ風、呼べよ嵐」風のベース・ギター、「エコーズ」バリのピアノも盛り込んだ。演奏は豪華なゲスト陣に任せ、ロジャーは作曲と歌にだけ専念し、しわがれた老人声で切々と歌い抜いている。

 ウォーターズ抜きのピンク・フロイドが、この2年後に発表した「対」は確かに優れた傑作ではあったが、ピンク・フロイドにしては、どこか紛い物ぽさがあったのに比べ、ウォーターズのソロ作品の方が本物ぽいのは皮肉な話で、これを聴くと、やはりピンク・フロイドすなわちロジャー・ウォーターズであることを認識せざるをえない。もうますますウォーターズはピンク・フロイドに返ってきて欲しいと思ってしまう。

 しかしこのアルバムでずるいのはギターに天下のジェフ・ベックを招いたことである。出だしのギター・ソロからいきなり凄い。神格化されたギタリストを招いたのは、1作目「ヒッチハイクの賛否両論」のエリック・クラプトンの例もあったが、クラプトンが平凡なブルース・ギターを披露していたのに対して、ジェフ・ベックのギターはあまりにも感動的で、ウォーターズの音世界に見事にマッチしている。ジェフ・ベックのギターは本来無機質的な音で知られているが、ウォーターズはその無機質さを活かし、得意のエコー&リヴァーブ・エフェクトで、無常なる美しさを引き出した。とくに (13) It's A Miracle の短いフレーズは鳥肌もの。ジェフ・ベックのギター・キャリアは華やかなものであるが、その中でも本作のギター・ワークは、彼のキャリアにとっても、ベスト・プレイと称して良く、この自信から、ジェフはコンセプト・アルバム的な「フー・エルス!」を作ろうと思ったのではないだろうか。とにかく本作はウォーターズの才能以上に、ジェフ・ベック抜きには語れないアルバムである。

バンド・アルバム・インデックス
Body, The
Pros & Cons of Hitchhiking
Radio Kaos

狂気
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