僕は下手なシンセサイザーが嫌いである。とくに、日本のどうしょうもない歌謡曲に、無意味に飾り付けとして演奏されるやたらと気取ったシンセサイザーを聴くと虫ずが走る。商品として量産されたポップ音楽ほど、ムカツク音楽はない。
しかし、「作られた」商品ではなく、作品として「作った」音楽は信念があって大好きである。すなわちそれがポップにはないロックの心であり、ジャズの心であり、テクノの心である。クラフトワークを代表とする本格的なエレクトロニックは、本当に素晴らしい。ロックやジャズと比べても何の遜色もないし、クラフトワークの奏でるシンセサイザーのサウンドは、ロックでいうところのギターソロやドラムのリズムと同等の意味と比重を持つ。こういうシンセサイザーの音は最高に心揺さぶるもので、大好きである。音の反復がなんともいえない気持ちよさで、「Autobahn」の爽快感、「Kometenmelodie」の高揚感、「Morgenspaziergang」の郷愁感、これはまさにロックそのもの。心に響く感動の音楽。クラフトワークは偉大なインダストリアル・バンドであり、かつ、70年代半ばを代表する最強のロック・バンドだったと断言する。 |