バック・イン・ブラック
Back In Black
1980
AC/DC

 オーストラリア出身のイギリス系ヘヴィメタ・バンドであるAC/DCは、「地獄のハイウェイ」が高く評価されて、バカ売れし、アメリカでプラチナ・ディスクを獲得した。ところが、その直後にヴォーカルのボン・スコットが酒を飲んでいてノドをつまらせ、死んでしまう。成功の後の悲劇。起死回生不可能か?という不満を吹き飛ばす、痛快アルバムが、この「バック・イン・ブラック」である。これはボン・スコットの弔いの歌としても話題性があったが、後任ブライアン・ジョンソンはボン・スコットの歌い方を完全にモノにしており、額に青筋たててそうなキンキン度はますますパワーアップ。曲の質感が変わることもなく、従来のノリを更に強調し、前作以上にヘヴィメタの様式的なアルバムとなった。
 ロック音楽というのはレッド・ツェッペリンにしろディープ・パープルにしろ、複雑な曲構成のものが多いが、その中でも様式だけにこだわり、終始スタイルを変えることなく、ノリだけを追求したAC/DCは、まったく希有のバンドである。しかも彼らはそこに誇りと威厳を持ち、そのリフはロックの様式美に達している。ギター2本とベースとドラムさえあれば、他に何もいらないという頑ななスタイル。オーバーダビングの形跡もなく、リフを軸として、いたってシンプルに演奏している。注目して欲しいのは、マイペースにノリを刻みつづけるドラムの音。どこも飾らないシンプルな演奏にして、そのパワフルなビートの、なんたる人間くささとアイデンティティ。とにかくAC/DCからは演奏者たちの人間的な温もりを感じ取ることができる。
 一般的に評価の高いジューダス・プリーストやブラック・サバスにしても、たいていどこかの方向へ逸れるものだが、AC/DCはまったく逸れることなく、とくにコマーシャリズムに走ったり、メッセージ性を強調するまでもなく、ひたすら純粋にヘヴィメタルの道をまっすぐばく進している。ある意味これもまたロックの神髄といえる。この神髄を体感するには、近所迷惑になるんじゃないかと思うくらい音量をあげ(このやりすぎなんじゃないか?という罪悪感がエクスタシーになっていく)、とにかく体全体でノルこと。
 単純明快がゆえに、あらゆる階層に受けいられ、なんと1600万枚ものビッグ・セールスを記録! 80年代の幕開け時、世間はこういう音楽を欲していた。

バンド・アルバム・インデックス
Ballbreaker
Blow Up Your Video
Dirty Deeds Done Dirt Cheap
Flick Of The Swich
Fly On The Wall
For Those About To Rock
High Voltage
Highway To Hell
Let There Be Rock
Power Age
Razor's Edge