Electric Mud
Electric Mud
1968
Muddy Waters

 フォーク界のボブ・ディラン、ジャズ界のマイルス・デイヴィスがエレキ化したように、ブルース界の重鎮マディ・ウォーターズもロックの世界へと触手を伸ばした。マディはロック・ファンの間でもかなり人気の高いブルース・マンで、「ローリング・ストーン」、「マニッシュ・ボーイ」など、その気迫たっぷりの存在感は、ハード・ロックの原点といわれている。
 「エレクトリック・マッド」はロック音楽がもっとも多様化しつつあった時代に生まれた歴史的1枚であり、当時はブルース・ファンから非難ごうごう浴びせられ、ブルース史上最も賛否両論を呼んだ。それまでに多くのロック・ミュージシャンがマディを真似たが、マディ自身からロック近づいたのは初めてで、何が起ころうとも1枚のロック作品として仕上げた意思は尊敬に値する。
 68年の作品なので、まだレッド・ツェッペリンも現れていないし、ようやくジミ・ヘンドリックスが頭角をあらわしたころである。それにして、このヘヴィなアレンジたるや、驚く他あるまい。ローリング・ストーンズの名曲「Let's Spend The Night Together」を自分流のブルースに歌った才能には感服である。もはや原形をとどめておらず、サウンドは数倍分厚くなっており、バリバリとファズのきいたエレキ・ギター、スキップするドラムのテンポなど、マディだけが持つ感性に裏打ちされている。
 ロックとブルースは昔からかなり相性がよかったが、その謎を解く鍵はこの1枚を聴けば発見できるだろう。