無論、彼らはロック史上最も息の長いバンドであり、ロック創世記の唯一の生き残りだ。ステージを右に左に野性味たっぷりにかけまわるミック・ジャガーを見ていると、60歳を過ぎた今もなお「かっこいい」と本気で断言できる。これは大変なことだ。ロック好きならローリング・ストーンズは手放しでたたえるべきだ。
ローリング・ストーンズといえば、ミック・ジャガーとキース・リチャーズだ。この2人は間違いなくロック界最強のコンビだ。2人あってのストーンズだし、その結束こそストーンズゆえ、どちらも欠けることはできない。また、あくまでバンドという形態にこだわり続けていることには偉大さを感じる。たいていバンドというのはエゴのかたまりであることがほとんどで、自然崩壊するのが目に見えているのだが、ストーンズはまだ崩壊していない。何度かメンバー交替があったにしろ、ミックとキース両雄のバランスは見事だし、チャーリー・ワッツという素晴らしい鉄人ドラマーがいるお陰で、ロック・バンドの代名詞的な存在として現在まで第一線で活躍を続けてこられた。一度も2軍に落ちることなく、常に最高潮の状態を維持し、ロックとファッションの大御所に立っていたことを思えば、恐るべしストーンズだ。
「生き抜いてやる」という強靱(きょうじん)なる生命力。これこそローリング・ストーンズのすさまじさではないか。今一度、ストーンズのファーストアルバムを聴いてみてくれ。彼らはただ単にR&Bをカバーするだけのごくありふれたグループであったことがわかるだろう。演奏もヘタだし、歌だってお世辞にもうまくない。バンド名も長すぎてピンとこないし、ルックスもデビュー当時はまあまあだった。早々とアメリカ進出したことは素晴らしいが、このファーストアルバムだけを聴いて、彼らがその後あそこまでの巨大なバンドになることを誰が予見できようか。ヤードバーズ、アニマルズなど、当時彼らのようなバンドは無数に存在していた。しかし彼らだけが時代を必死で生き抜いてきたのだ。
ロックで生き残るための方法はただひとつしかない。それは自力で曲を作ることだ。自力で曲が書ければアルバムも発表できる。どんなにコケにされようが、曲を作っていく意欲があるうちは、破綻(はたん)することはない。これは映画で言うところの自作自演で生き残ってきたクリント・イーストウッドに近いものがある。自力で生きていくこと。ミック・ジャガー&キース・リチャーズという最高のコンビは、それだけをつらぬき、スーパーグループ・ローリング・ストーンズを前進させてきた。そして活動2年目から本領を発揮。「サティスファクション」「ホンキー・トンク・ウィメン」「悪魔を憐(あわ)れむ歌」など毎年次々とヒット曲もひねり出した。中にはどこかのパクリっぽい曲や、それまでの自作の刷り直し的なナンバーも多く、変化にとぼしかったり、たしかに常に時代に一歩遅れて付いてきている感じはいなめなかったが、アンディ・ウォーホルやジャン・リュック・ゴダールとコラボレートするなど意欲的に活動し、毎日着々とグループは前へ歩み続けていた。彼らは絶対に生き抜いてやるぞというハングリー精神に溢れていた。ミック・ジャガーのパフォーマンスも、いつしか唯一無二の光沢を持つまでになっていったし、キース・リチャーズのギターもより洗練度をあげていった。中でも「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」は素晴らしい出来栄えだった。このミュージック・フィルムは恐らくロック史上最高にイカすPVに違いない。モノクロームの映像の中、5人のパフォーマンスが凄まじい躍動で目前にせまってくる。この熱さこそ、ローリング・ストーンズのロック魂だ!
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