レインダンス
Rain Dances
1977
Camel

 キャメルはどのアルバムもすこぶる優れているが、中でもこれは、なにか超越してしまったかのような神懸かり的なものを感じる名盤といえる。
 キャメルはやはりインスト中心のバンドである。そのため、インスト曲バリバリのアルバムをぜひとも聴いてもらいたいところだ。全編インストだけで攻めた『スノー・グース』は最大級の賛辞を呈すべき大傑作であることには違いないのだが、どうしても歌ものが聴きたいという方には、この『Rain Dances』の方がオススメではないかと思う。『Rain Dances』は基本的にインスト中心のアルバムであるが、歌ものの曲が4曲入っているからだ。これは大変キャメルらしい作品だと思う。
 ベースがダグ・ファーガソンから元キャラヴァンのリチャード・シンクレアに交替し、ラティマーと彼がヴォーカルを分け合うことで、それまで「弱い」とか「下手」と言われてきた歌もの曲のパワーアップを図っているが、「Highways Of The Sun」では見事に功を奏している。
 この作品にもゲストとしてメル・コリンズが参加。「First Light」その他多数、サックスとフルートで大いに味付けしているが、第一期時代から長らくゲスト扱いだった彼も、ようやくこの後正式メンバーとして契約することになった。遅すぎた契約だとは思うが、プログレ界最高の木管楽器奏者の加入はファンにも嬉しいニュースだったろう。
 アンディ・ラティマーのギターは、いつもながら泣かせくれるが、このアルバムではピーター・バーデンスのキーボードにも聴き所が多く、そこにメル・コリンズのサックスを加えた3楽器の織りなす相互作用効果はもはや史上最強ではないかとさえ思わせるものがある。
 アンビエント的な「Elke」(イーノがキーボード演奏)から「Skylines」、「Rain Dances」までの3曲の流れは絶品である。この3曲の流れに身を任せているだけでも、不思議な気持ちになれる。ジャケットのイメージをそのまま音楽にしたような感じ。まるで吸い込まれていくような思いである。初めて「Rain Dances」を聴いたときには涙が出そうになった。

バンド・アルバム・インデックス
Breathless
Camel
Dust And Dreams
Harbour Of Tears
I Can See Your House From Here
Mirage
Moonmadness
Nude
Rajaz
Single Factor, The
Snow Goose, The
Stationary Traveller