マシュ・ケ・ナーダ
Sergio Mendes & Brasil '66
1966
Sergio Mendes & Brasil

 今でこそボサノバの名盤という肩書きを背負っているアルバムであるが、発表当初は「ラテン・ロック」として売られていた。というわけで、ここではラテン・ロックとして語らせてもらう。
 ラテン・ロックといえば、彼らの後に出てきたサンタナがその座を乗っ取ってしまった感があるが、あちらがメキシカ寄りに対し、こちらはブラジル寄りである。ブラジルはサンバの国であり、サンバとジャズが合体して、ボサノバになった。ところがボサノバといえばスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトが最も有名で、時代から考えて、ピアニストのセルジオ・メンデスはボサノバ・ブームに後から乗っていったということになる。そのため、スタン・ゲッツと比較されることが多く、静的でロマンチックなゲッツとは対照的に、動的で陽気な音楽として賛否両論がある。動的という意味ではロックの仲間といわれても悪くあるまい。少なくとも世の中に氾濫するしょうもない歌謡曲のように下手に気取った飾り付けがなく、アコースティックでシンプルな打楽器ロックに仕上がっているところに好感がもてる。女性ボーカルの声もハスキーで案外とロックっぽい。とくに1曲目の「Mais Que Nada」は名曲中の名曲で必聴。パーカッションの音がいい音で、聴いていて大変気持ちいい。カバー曲ばかりだが、どれも見事なアレンジで、オリジナルをまったく尊重しない作りがヨロシイ。ビートルズの「Daytripper」も見事な打楽器ロックに変身。いやはやこのリズムとテンポは、一度聴いたらクセになりますな。