日本でも人気の高いサンタナの歴史はずいぶんと長い。「スーパーナチュラル」がグラミー賞を取り、サンタナの健在を証明したが、あれを見てもわかるように、サンタナといえば、ギターを弾く渋いおっちゃんとイメージしている人は多いと思う。たしかに今はそうである。カルロス・サンタナのギターが中心であるし、他のメンバーは誰でも良くなってきたのだが、かつてのサンタナはかなりバンド・サウンドを意識した、ライヴ・バンド然としたメンバー重視グループであった。後にジャーニーを結成するニール・ショーンも元はサンタナのメンバーである。1969年ウッドストックのライブで、一際目立っていたバンドがサンタナである。この頃は全くの無名であったが、ラテン・黒人・白人入り交じった当時二十歳前後のメンバーは全員全身全霊を込めて「ソウル・サクリファイス」を演奏。インストゥルメンタル曲にして、これぞロックといわんばかりの圧倒的なパワーに満ちあふれていた。後にサンタナが「精神性」を売りにすることになるが、すでにこの頃からスピリチュアルな演奏を完成させていたようにも思う。歌ものもあるが、下手クソである。その下手さがかえって魂を感じさせたものである。
　69年ファーストアルバムの発表。この時はラテン・フレーバーなパーカッションをフィーチャーしたパワフルなブルース・ロックという感じであった。メンバーの演奏はかなり荒々しいが、強烈なインパクトがある。それから「天の守護神」「サンタナIII」をコンスタントに発表し、全米で大ヒットセールスを記録する。この頃からラテン・ロックという新ジャンルをすでに確立させていたが、ドラマーのマイク・シュリーヴが中心となっての「キャラバンサライ」から作風ががらりと変わり、ジャズ・テイストの繊細なサウンドとなった。「キャラバンサライ」はその雰囲気といい、アルバムジャケットといい、ジャズ・ロックのトータルアルバムの金字塔を打ち立てる。続く「ウェルカム」はまさに音の宝庫。ラテン色を残しつつ、前作のジャズっぽさ、ジョン・マクラフリンら豪華ゲストを迎え入れ、スピリチュアルな演奏で聴かせる音楽絵巻となった。この頃はギターもキーボードもドラムも自己主張していて非常に面白かった。セカンドアルバムからこの頃までの70年代前半がまさにサンタナ最盛期である。この頃の最高傑作であろうライヴ盤「ロータスの伝説」は日本でのライブ音源である。2時間中「ブラック・マジック・ウーマン」以外は全部インストゥルメンタル曲で聴かせてしまう大胆さ。メンバー全員の演奏はただただ魂を揺さぶられる。ヴォーカリストのいないバンドでここまで人気があるのも凄いことである。
　サンタナは日本びいきでもあり、ジャケット・デザインを横尾忠則に依頼するなど、日本との関わりも深く、またマイク・シュリーヴはツトム・ヤマシタとスティーヴ・ウィンウッドのゴー・プロジェクトにも参加しており、カルロスは日本のギタリスト高中正義とセッションしたり、ソロ・アルバムを日本で録音している。
　「不死蝶」で再びトータルアルバム的な演奏を聴かせた後、「アミーゴ」でまたサウンドが変化した。サンタナは聴き手を楽しませる音楽を追究し、万人に掴みやすいラテン・サウンドをさらに推し進めた。このアルバムには「哀愁のヨーロッパ」も収められ、刑事ドラマばりのそのギター・ソロは熱烈なファンを生む結果となり、カルロスのテーマ曲となった感さえある。ここからカルロス中心のユニット的バンドとなる。それまでは演奏主体だったが、ここからは楽曲主体である。毎度豪華なゲスト・ミュージシャンを迎えての音作りは、他に追随を許さないものがある。
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ベストフィルム「ソウルサクリファイス」（ウッドストックから）（YouTube）