ザ・バンド
ザ・バンド

 ロックを好きという人には、十人十色、ロックを好きになる何かしらのきっかけがある。僕の場合、<バンド>のライブ映画「ラスト・ワルツ」を見たことがそのきっかけである。夢中で演奏するメンバー5人の汗臭さ。見た目はすごくやぼったいのに、演奏も歌もダサダサなのに、それなのにどうしてかかっこいい。心に強く訴えかけるものを感じる。「Up On Cripple Creek」と「The Night They Drove Old Dixie Down」の演奏には例えようのない興奮と幸福感を覚えたものである。これがロックなんだなぁと。「ラスト・ワルツ」1本だけで僕は一気にロックの世界にのめり込んだわけで、今では毎日ロック浸けの生活である。僕をこんな幸福者にしてくれたきっかけとなった<バンド>は、僕にとって最も好きなロック・グループのひとつである。

 <バンド>はカナダ人の集まりであったが(ただしリヴォンだけアメリカ人)、アメリカのルーツ・ミュージックを演奏するバンドとして最も有名になった。中心人物はギター担当のロビー・ロバートソン。<バンド>のオリジナル曲のほとんどは彼一人で作曲したものであるが、彼自身は歌を歌わず、渋味のリヴォン(ドラム)、グルーヴのリック(ベース)、センチなリチャード(ピアノ)の3人にヴォーカルを分けさせた。そこに一人だけ楽譜が読めるオルガン兼サックスのガースが加わり、曲のドラマ性を膨らました。メンバー5人はほぼ対等の立場に立ち、それぞれが主役を演じた。<バンド>の良さは、この連帯感にある。これほどバランスのとれたグループは<バンド>をおいて他になく、解散コンサートに数多くのゲストを迎え入れる器量があったのも、彼らの性格ならではといえる。「ロック・バンドのメンバーは一蓮托生」というロックの最も根本的な精神を、彼らは78年の解散まで捨てることはなかったのだった。

 何よりも渋いバラードに実力を発揮する<バンド>。名盤「Music From Big Pink」を発表したとき、ロビーが一番若く24歳。最年長はリヴォンで27歳。早老ガースはまだ25歳。平均年齢25歳にして、この親父臭さ。それまでのロックの概念は、「若者の反抗」であったが、<バンド>はその風潮を真っ向から否定し、枯れた中年男のおんぼろ人生をロックの中に表現。まったく新しいロックのイメージを打ち立てたのだった。
 アメリカのロックの心を知るなら、ボブ・ディランと<バンド>を聴くのが一番である。
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ベストフィルム「The Weight」


ロビー・ロバートソン (g)
リック・ダンコ (b)
リヴォン・ヘルム (dr)
ガース・ハドソン (organ)
リチャード・マニュエル (piano)



Music From Big Pink (68)
The Band (69)
Stage Fright (70)
Cahoots (71)
Moondog Matinee (73)
Northern Light Southern Cross (75)
Island (77)

Jericho (93)
High On The Hog (96)

【Live Album】
Rock Of Ages (72)
The Last Waltz (78)



ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク
Music From Big Pink