初対面の人と、ロックの話題をしていいものだろうか。その人がバリバリのロック・ファンだと確信があれば、こっちも話が早いのだが、その人がロック好きかどうかを見極めるのは容易いことじゃない。
 僕はロックといえばビートルズというくらい「ロック=ビートルズ」という公式が成り立ってしまっているが、ビートルズは有名すぎるせいか、ロックに興味のない人でも大抵知っている。だから「俺はビートルズが好きだ」という人がいたからって、その人がコアなロック・ファンかというと、そうじゃなかったりする。
 だいたい「好き」ってものにも度合いがある。ちょっとだけ好きでも好きは好きなのである。だから好きといったからって、それが本当に心の底から好きなのかはわからない。例えばビートルズが好きといったからって、どれくらい深くまで知っているかは、もう少し話を聞いてみないとわからない。そういう人に限って単にベスト盤しか持ってなかったり、「プリーズ・プリーズ・ミー」や「キャント・バイ・ミー・ラヴ」しか知らなかったりして、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの声の区別すらできず、ジョージ・ハリソンに関しては名前すら知らず、中期のアシッド・ソングや、後期のバラエティ豊かな音楽スタイルを心得ていないわけである。だいたいビートルズはロックが嫌いという人にも人気があるし、パンクやヘビメタが好きという人にも人気があるので、話題も漠然としている。もっともそこがビートルズの偉大なところだと思うのだが。
 キング・クリムゾンが好きといえば、ああ、この人はプログレが好きなんだなあと、だいたい見当はついてくる。ジャーニーが好きというなら、ははーん、80年代サウンドが好きなんだな。ボン・ジョヴィが好きなら、こいつは昔のロックは知らないに違いないとか、僕は色々想像してしまうわけである。
 では、どうやってロック好きを見極めればいいのだろうか・・・。僕のいつもの手は「ロック・マニアですか?」と、こう聴くことである。「マニア」という言葉はかなり便利である。この称号は本当に好きでなければ使えないだろう。僕はそうやって、ロック好きの友達を増やしてきた。差し向かいで一緒にロックのコアな話題で盛り上がるのは、とても楽しいものである。(2005/2/28)