先日、渋谷で「ロスト・イン・トランスレーション」という映画を見た。かのソフィア・コッポラの新作だ。東京を舞台にしたアメリカ映画で、まったく日本語を話せないビル・マーレーが日本文化に翻弄されるコメディである。
さまざまな日本文化がおもしろおかしく描かれているが、俺が最も注目したのは、もちろんロックについて。日本語ロックの覇者<はっぴいえんど>のナンバーも効果的に使われている。そして見所は、カラオケ・ボックスのシーン。
主人公が選んだ曲(というか歌わされた曲だな)は、ロキシー・ミュージックの「More
Than This」だった。ロック・マニアにしかわからんような渋い選曲である。俺の敬愛するブライアン・フェリーのボーカルの魅力が最も発揮されたロキシーの最高傑作であるこの名曲を、ブライアン・フェリーが歌っているからこそ価値のあるこの名曲を、はたしてビル・マーレーがどう歌ってくれるか興味津々だ。歌う前に「これは難しい曲だ」の一言。いきなり出だしからハズして空気を白けさせてくれます。でもその歌声が妙に日本人そっくりで、好きなわけで。ブライアン・フェリーのダンディズムを出したくても出せない主人公の哀歌。たぶん俺が歌ってもあんな感じになっただろう。
日本人はやたらとカラオケに遊びにいく人種だが、外国人が映画の中でカラオケ・パーティをしているのを見たのは俺もこれが初めてだ。このワンカットを見て、俺はビル・マーレーのファンになっちまったよ。(2004/4/19) |