ロキシーのクリエーターとしての音楽活動10年間の最終結果。
(1) More Than This 始め、収録曲の全曲がナルシスティックな気品に彩られている。いったいどうすればこれほど美しい曲を作ることができるのだろうか。ギターはギター、ベースはベースに違いないのだが、その音はまるで楽器とは思えないほど、幻想的だ。それでいて紛れもないロック・サウンド。アレンジの素晴らしさと、神業ともいえるミックス。サイドで響きわたるギター・サックス・ピアノの誰にも真似できないセンス。オーケストラには頼らず、ロキシーは実に軽楽器だけで壮大な世界を創造してしまったのである。その世界は、フェリーの一種ロマンチシズム漂うボーカルと完全に融合している。
ある意味、ロキシーはこれ一枚で、ロックの表現の限界を破った。音楽だけではない。ジャケット・デザインを含めて、すべてがひとつのコンセプト達成のために結集し、「ロキシー・ミュージック」というひとつのジャンルを創り上げている。その意味ではサンタナの「キャラバンサライ」と同等の賛辞を捧げたい。感性に訴えかける屈指の名盤である。 |