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Anderson, Bruford, Wakeman, Howe
1989
ABWH
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ABWHは元イエスのメンバーの集まりである。ヴォーカルのジョン・アンダーソンは、イエスの「ビッグ・ジェネレーター」で自分に全く主導権がなかったことに嫌気がさし、イエス二度目の脱退を遂げた。そしてジョンが秘かにイエスに対抗して作ったバンドがこれだった。まずビル・ブラッフォードを誘い、続いてスティーヴ・ハウとリック・ウェイクマンを誘った。スティーヴは当時本家イエスのことを心底恨んでいたし、リックにも妬みがあった。ビルは「スティーヴとリックが入ったときにはマズいと思った。これじゃまるでイエスじゃないか」と思ったことを後に語っている。すべてジョンの策略だった。ジョンとクリスは二手に分裂し、ここにクリス抜きのイエス・メンバーが結集したのだ。バンド名はクリスの名を当て付けに排除した<アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウ>である。本当は<イエス>を名乗りたかったのだが、クリスのイエスを打ち砕く以上は、別名を名乗るしかなかったが、バンドの人たちは内輪では「西のイエス」「東のイエス」とそれぞれを呼んでいたらしい。ゲストにはキング・クリムゾンのトニー・レヴィンと、元イエスのジェフ・ダウンズを迎えいれ、ジャケットをロジャー・ディーンに依頼するなど、ジョンの対抗意識はむき出しである。
実質的にイエスのマネージメントをやっていたクリス・スクワイアは黙っていなかった。ジョンに反発し、訴えたのも納得だ。そうとう辛かっただろうが、クリスに負けない自信があったのも間違いあるまい。実際「90125」はイエスの歴史でも最も目覚ましい足跡を残していたし、トレヴァー・ラビンの才能を信じていた。しかし「危機」を作ったこのメンバーのうち、クリスが一人抜けただけでイエスを名乗れないとは、クリス恐るべしだ。
クリスはABWHにイエスを想像させるいかなることをやらないことを約束させていたため、この問題作は、100%イエスメンバーで構成されているが、どこか反イエス的な今までにないスタイルに挑戦した内容となっている。イエス本来の持ち味である楽器バトルはあまり聴かれず、メロディ主体になった感じである。本家イエスには及ばないが、サウンド的には申し分のない出来で、「Order
Of The Universe」はテレビ朝日の「ザ・スクープ」のテーマ曲に使われるほどである。本家イエスの面々とは各楽器パートの演奏法が全く違うことで、むしろイエスという巨大なバンドのバラエティの豊富さを再確認させられる。とくにリックのキーボードがイエスと全然違う奏法で興味深いが、クリスのゴリゴリ・ベースが聴けないのは残念である。 |
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