90125
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1983
Yes

 僕が思うに、これこそイエスの最高傑作じゃないか。いやいや「サード・アルバム」も「こわれもの」も「究極」もイエスらしくて素晴らしいのだが、楽曲の豊かさ、サビの決まり具合、トータルバランス、掴みやすさなど、あらゆる点で全曲満点評価を与えたい作品である。「Owner Of A Lonely Heart」はMTVでも定番だったので、あの渋いエレキ・ギターのサウンドを誰しも一度は耳にしたことがあるはずだ。
 これの中心人物はトレヴァー・ラビンであろう。彼の弾くギターはスティーヴ・ハウとは180度性質が異なるが、これほど当時の時代性にフィットするギターもあるまい。彼には作曲の才能もあるし、ヴォーカルをやらせても素晴らしく、しかもハンサムときており、バンドをしっかりと立てていた。
 今作ではクリス・スクワイアのヴォーカルも多数の曲で聴くことが出来、ジョン、クリス、トレヴァーらのコーラスは見事なまでの感動を呼ぶ。特に「Leave It」は、構成といい、サビのかっこよさといい、ハーモニーの美しさといい、クセになる内容で、僕はイエスの曲でも最も好きである。
 キーボードがイエスの元祖キーボーディスト、トニー・ケイだというところも嬉しい。彼もリック・ウェイクマンとはまるで性質が異なるが、リックのアナログっぽさに比べると、よりデジタル的で、万人受けしやすい。
 これは当初クリスの呼びかけで<シネマ>というバンド名で活動を開始していたのだが、元イエスのメンバーが4人も揃うことになってしまい、バンド名を<イエス>とすることにした。イエスのネームバリューを利用し、しかも80年代の時代性を反映させたファッションで攻めてくるとは非常に計画的である。しかしそれでことごとく成功し、今聴いてもアルバムの出来栄えは完璧と来ているのだから、文句の言い様がない。

バンド・アルバム・インデックス
Big Generator
Close To The Edge
Drama
Fragile
Going For The One
Magnification
Open Your Eyes
Relayer
Tales From Topographic Oceans
Talk
The Ladder
Time And Word
Tormato
Union
Yes
Yes Album, The

イエス・メンバー偉人伝
10.トレヴァー・ホーン

トレヴァー・ホーン 49年イングランド・ヨークシャー生まれ。イエスがバンドの顔であるジョンを失った後、その穴を埋める大役を授かった。彼が当時相当なプレッシャーを抱えていたことは想像に難くない。幸い彼はジョンと声質が似ていたし、彼のポップ・センスはイエスサウンドに見事に融合し、会心作『ドラマ』が誕生する。しかし、「イエス=ジョン」というファンからは不評を買った。
 イエスのメンバーのほとんどがイエスでいることが苦痛だと語っていたのに対し、彼はあれだけ叩かれていながらも、イエスでいたことが「幸せだった」と前向きに語っている。もともとイエスの大ファンで、イエスと一緒に仕事ができただけでも満足だったという。
 本業はプロデューサーで、イエス脱退後は本業に復帰。早速イエスの『ロンリー・ハート』をプロデュースし、天才的アレンジで、バンドを初の全米第1位という成功に導いた。
 彼は他にも、アート・オブ・ノイズ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、シール、t.A.T.u.などを手がけている。