The Very Best Of Mick Jagger
The Very Best Of Mick Jagger
2007
Mick Jagger

 ベストアルバムは買わない主義だが、これは別格。
 だって未発表曲が3曲も入っているし、そのうちの1曲はジョン・レノンのプロデュースだし、さらに特典としてDVDがついているのだから、ローリング・ストーンズのファンとして絶対に無視できなかった。
 まずは特典DVDについて。ジャケットの写真そのままのすがすがしいミックのインタビューが入っている。ミック・ジャガーって本当に性格がいい人なので、話をきいていて決して「嫌だなあ」と思うことがなく、こういう映像を見ると親近感が高まる。話しながら自分で笑って目が細くなってしまうところとか、ファンなら胸キュン必至。言っていることも結構ためになる話ばかりで、レニー・クラヴィッツやボノについて言及しているところなど興味深い。
 服装がダサいビデオなども収録されているが、これは本人も「時代遅れだ」と認めつつ、「映像というのはタイムカプセルなんだ」と言っていた。うん、納得。
 MTV用のビデオは、「God Gave Me Everything」など、いかにもという感じの時代を反映したものばかり。僕はこういうプロモーションビデオはロック魂を削ぐ根源としてあまり好ましく思っていないが、ひとつだけ「Don't Look Back」のライブ映像が気に入った。ピーター・トッシュの横でぴょこぴょこ跳ねるミックが可愛い!
 曲については、見事な選曲。時代もバラバラに並べたところが良く、1曲目からガシガシとアップテンポばかりで、アルバム全体の流れもちゃんとつながっており、レゲエやファンクやカントリーなど多彩で、「ベストアルバムに対する批判」についての考えを改めなければならないと思ったくらいだ。たいへん気に入った。連続で10回聴いたほどだ。デヴィッド・ボウイなど、大物アーチストとのデュエット曲も多数あって楽しい。僕はジョン・レノンのベスト盤も持っているが、あれはテンポもぐちゃぐちゃで、こんなにちゃんと出来ていなかった。
 ジョンといえば、目玉の「Too Many Cooks」は、たしかにすごい。言われてみれば当時のジョンのソロの乗りにも近い。ファンキーな内容で、ミックものりのりで歌っていて、その迫力は圧巻。まったくこれが未発表だったのは意外である。今回収録した理由はミック曰く「YouTubeでも聴けるから入れた」とのこと。ミックもYouTubeを見ていることにちょっとびびったけど、アーチストの側にしてみれば先にヤラレタという感じなのだろう。
 お気に入りは「Let's Work」。すごく元気がでる曲だ。ドライブしながら聴いても気持ちが良い。ストーンズとして歌えばもっと楽しかっただろうに。
 「Lucky In Love」も傑作。こういうギターに僕は弱いのです。
 この1枚を通じ、改めて僕のもっとも好きなボーカリストはやっぱりミック・ジャガーなんだなあだと再確認することになった。ほんと、ミックの声は癖になる。何度聴いても飽きない声というか、聴けば聴くほど味がにじむというか。決してうまいわけではないのだが、親しみを感じる。買って損のない一品ですよ。