マスウェル・ヒルビリーズ
Muswell Hillbillies
1971
The Kinks

 キンクスといえば、「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴァイション・ソサエティ」、「アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」、「ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組第1回戦」の3枚こそ世間的にも批評家的にも認められた傑作と言われているが、ならばこの「マスウェル・ヒルビリーズ」ほど、内容に反して一般受けの悪いアルバムはないだろう。<最も英国的なロック・バンド>と言われた彼らが、活動の拠点をアメリカへと移し、最初に発表したアルバムがこれだが、全米で100位以下という全くの不発に終わった。ところがその商業成績とは裏腹に、作品の内容をじっくり聴いてみると、これほどない大傑作。おそらくキンクスのアルバムの中でも史上最高の美しさ、憂い感、郷愁感をもった、永遠に手元に置いておきたい宝物のような作品である。「アルコール」は絶品中の絶品。1曲1曲が噛めば噛むほどに味わい深く、珠玉の小品集。アメリカのルーツ・サウンドを取り入れているが、そこに広がる世界は、イギリスの田舎町のような、牧歌的な風景である。「20世紀の人」は泥臭いがスライド・ギターなどヘヴィでわかりやすいサウンド。ボードビルタッチの「精神分裂偏執病ブルース」など素晴らしいほどの老いらくぶり。日差しが差し込んでくるパブをスケッチしたようなジャケットがまたわびさびを感じさせる。タイトル曲「マスウェル・ヒルビリーズ」を聴くと、レイ・デイヴィスののびのびとした、ただただマイペースに自由に歌い上げるスタイルがまた心地よく、キンクスにしかだせないそのキンクス節に乾杯。これが受けなかったのは宣伝戦略に問題があったと思われる。いかに音楽を売るためには宣伝が有効的なのかを思い知らされる。

バンド・アルバム・インデックス
Arthur Or The Decline And Fall Of The British Empire
Everybodys In Showbiz
Face To Face
Give The People What They Want
Kinda Kinks
Kink Kontroversy, The
Kinks, The
Low Budget
Misfits
Part 1. Lola Versus Powerman And The Moneygoround
Percy
Phobia
Preservation Act 1
Preservation Act 2
Schoolboys In Disgrace
Sleepwalker
Soap Opera
Something Else By The Kinks
State Of Confusion
Think Visual
UK Jive
Village Green Preservation Society, The
World On Mouse