フォビア
Phobia
1993
The Kinks

 キンクス活動29年目にして、27枚目のアルバム。惜しくも毎年平均1枚ペースの伝統が破られた最初の作品となってしまった。キンクスはこれ以後、実質的に活動を停止してしまうが、しかしよくここまで頑張ってくれたと思う。
 まずこのジャケットのかっこよさが目を惹く。内容は、CD世代にあわせて、LP2枚分のボリュームである。聴いてみると、まず演奏の若々しさに驚く。かなり90年代らしいヘヴィな演奏だが、レイ・デイヴィスの歌はあいかわらず60年代のままの重量感のないマイペースな感じ。ヴォーカルが弱いといえば弱いのだが、ま、そこがキンクスの良いところなんだけど、でもレイ・デイヴィスならではのおっちゃんシャウトは健在だ。20代のころからおっちゃんシャウトを続けてきただけに、今も変わらない歌声にはむしろ感動さえある。
 リフが印象的なタイトル曲「Phobia」もかなりメタルチックでかっこいいが、「It's Alright」はもっとメタル寄りで、レイよりもデイヴの声の方がメタル向きだと再確認させる。キンクスはデビュー当時からしてヘヴィメタの原石的なサウンドを量産していたが、この時代となるとヘヴィメタそのものになってきた。
 面白いのはレイとデイヴがデュエットする「Hatred」。レイとデイヴの仲の悪さはあまりにも有名で、お互い仕事では向き合っているが、プライベートでは一切口もきかないという。この二人の気持ちがこの曲の歌詞に現れていて、なんだか嬉しくなる。「お前は俺を憎み、俺はお前を憎んでる。その意味では俺たちは理解しあってる」「憎しみだけが俺たちをつなぐ唯一の絆」という感じだ。
 キンクスは常に歌詞が頭に入ってくるバンドだ。テンポのゆるやかな「The Informer」など、メロディよりも歌詞が入ってくる。レイの歌詞には物語があるから好きである。やはりレイ・デイヴィスはロック界切っての詩人だと思う。

バンド・アルバム・インデックス
Arthur Or The Decline And Fall Of The British Empire
Everybodys In Showbiz
Face To Face
Give The People What They Want
Kinda Kinks
Kink Kontroversy, The
Kinks, The
Low Budget
Misfits
Muswell Hillbillies
Part 1. Lola Versus Powerman And The Moneygoround
Percy
Preservation Act 1
Preservation Act 2
Schoolboys In Disgrace
Sleepwalker
Soap Opera
Something Else By The Kinks
State Of Confusion
Think Visual
UK Jive
Village Green Preservation Society, The
World On Mouse