ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組第1回戦
Part 1. Lola Versus Powerman And The Moneygoround
1970
The Kinks

キンクスの最高傑作は「マスウェル・ヒルビリーズ」に違いないが、あれは上級者向けなので初心者には薦めるべきではない。入門編としては「ローラ対パワーマン」を一番に薦める。全曲が奇跡的な完成度を誇り、僕自身もキンクスのアルバムでは最も愛聴しているアルバムである。
前作「アーサー」でフーも顔負けのロック・オペラに成功したキンクスが、再び英国の雰囲気溢れるコンセプト・アルバムの傑作を作ったのがこれ。前作「アーサー」のフォーク寄りのサウンドとは違い、ファズを効かせたエレキ・ギターのいわゆる<キンキー・サウンド>が随所にちりばめられているところが嬉しい。リフの天才といわれたレイ・デイヴィスならではの見事なリフさばきを堪能してもらいたい。「Top Of The Pops」と「Powerman」のリフは最高にイカス。
ハイライトは「Lola」。レイお得意の物語を持った歌詞が面白い。これはロック史上初めて性転換と同性愛について描いた作品だ。レイの歌声はまるで後のグラム・ロックを彷彿とさせる。ライブではこれを歌ってくれないことにはファンは満足しない。ファンの間では「You Really Got Me」よりも評価の高いキンクス最大の代表曲である。
キンクスはこのアルバムから新たにキーボーディストのジョン・ゴスリンを加えて5人編成となったが、そのためキーボードも前面に押し出している。ゴスリンの演奏が際立つ「This Time Tomorrrow」から「A Long Way From Home」にかけてはキンクス節が炸裂。妙に懐かしい気持ちにさせてくれる。この流れが感動の大作「マスウェル・ヒルビリーズ」へとつながる。
このアルバムでは弟デイヴ・デイヴィスも大活躍している。「Strangers」と「Rats」はデイヴの作曲で、歌もデイヴ自身。デイヴの声はレイと違い、キーが高く、まだ生まれていないヘヴィメタルの発声法を思わせるくらいだ。「Rats」はミック・エイヴォリーのドラムが大活躍。フーも相手じゃないよという自信さえ感じる。

バンド・アルバム・インデックス
Arthur Or The Decline And Fall Of The British Empire
Everybodys In Showbiz
Face To Face
Give The People What They Want
Kinda Kinks
Kink Kontroversy, The
Kinks, The
Low Budget
Misfits
Muswell Hillbillies
Percy
Phobia
Preservation Act 1
Preservation Act 2
Schoolboys In Disgrace
Sleepwalker
Soap Opera
Something Else By The Kinks
State Of Confusion
Think Visual
UK Jive
Village Green Preservation Society, The
World On Mouse