弊サイトでは、このアルバムを「ロック」のアルバム第1号としている。それまでの音楽界において、アルバムというのは「いくつかのシングル曲に未発表曲を数曲付け足して売ったもの」でしかなかったが、ビートルズの「ラバーソウル」は一貫してアルバムのトータル・バランスに重点が置かれたのだ。
まず一曲目に激しい(1) Drive My Car で幕を開け、(2) Norwegian
Wood 、(7) Michelle など、ドラマチックな曲を展開させ、(14) Run For Your Life でスリリングに締めくくる。ほとんどの曲が2分30秒足らずという短さだが、ピシッと張りつめた曲が多く、一気に最後まで聞かせるアルバムである。
このアルバムから、ビートルズはアルバムとシングルを全く別のメディアとして分けて考えるようになった。アルバムが曲の寄せ集めではなく、ひとつの芸術作品となり、すなわちそれが「ロック」といわれるものになった。「ロック」とはアルバムのトータルアートなのである。
以後のビートルズ作品は、「リボルバー」「ホワイトアルバム」に代表されるアバンギャルド志向と、「サージェント・ペパー」「アビー・ロード」に代表されるトータル志向の二面性を出していくことになる。どちらともロックとしては興味深いものだが、とくにトータル志向に徹したビートルズの作品群は完成されており、ロックの最も理想的な形をしている。 |