僕は映画畑から音楽畑の方まで徐々に守備範囲を広げていったオタクゆえ、ロックの「若さ」にただならぬ嫉妬を覚える。映画というものは、元来から大人のための芸術という印象が強く、作り手も中年の人が多かった。ところが、ロック文化はとにかくなにもかもが若かった。10歳代から20歳代の若造たちがいっちょまえにギターなんぞひいて、世界中の聴き手たちを感動させている。ビートルズが人気絶頂期だったころ、メンバーは皆20代前半だった。解散したころも、それでもまだ20代後半である。ビートルズに限らず、ロックの巨人たちは皆20代半ばでその代表作を作っている。ピンク・フロイドが20代半ばであんなにもアーティスティックな音楽を作ってしまうとは驚きだ。どのバンドもヒゲをはやして落ち着いているせいか、見た目年齢は30歳代なのだが、彼らがまだ若造だなんて、考えただけでも妬ましい。僕はこの記事を書いている今現在27歳であるが、彼らはもっと若いころから大成功を収めたわけだし、そうとう年輪を重ねているように見えるのだ。僕はときどき「俺は自分よりも年下の人が書いた音楽に感動してるのか」「それに比べて俺は・・・」と自分の無能さがイヤになってくるわけである。これは音楽の専門家が、若死にしたモーツァルトやシューベルトの才能に嫉妬することに似ているかもしれない。しかしそんなことを言ってちゃ芸術は楽しめない。
 映画は19世紀からあったが、ロックン・ロールは20世紀中頃から生まれた文化である。文化としても若すぎである。マーロン・ブランドが大活躍していた時代に、ロックン・ロールという音楽がまだ無かったと思うと、不思議で仕方がないのだが。
 ところで、60年代のアーティストたちは今もほぼ現役で頑張っている。20歳代からやってるから、40年たってもまだ60歳代。ローリング・ストーンズの活躍ぶりは目覚ましいものがあるし、エリック・クラプトンも神格化されてきた。「じじい」扱いするにはまだ早い。しかしストーンズやクラプトンは特別なケースで、たいていのミュージシャンはもうシワだらけになって、声も枯れてしまい、パワーダウンしている。ちょっと悲しいところである。(2004/10/29)