ディープ・パープルの音楽の特徴として、ハード・ロックの中にクラシックの有名なフレーズを引用する演出があるが、それをより膨らまして、壮大な協奏曲にしてしまったのがこのアルバム。キーボードのジョン・ロードが一人で全部作曲した。ジョンは以前からロック楽器とオーケストラの共演を夢みていたが、メンバーチェンジのタイミングを利用して、その夢をここに実現させた。他のメンバーたちも面白そうだと参加し、少しも硬くならずに、意気揚々と演奏している。これが奇しくも黄金期といわれた第二期ディープ・パープル初のお披露目会となった。
クラシック好きにうるさいと言われたハード・ロックと、ロック好きに生ぬるいと言われたクラシック。両者は互いに反発しあうものであったが、その垣根を打ち砕いた勇気。当時、これは音楽界における大事件だったと想像できる。ディープ・パープルがすごいのは、あれだけヘヴィな曲ばかりを作っていながら、このような壮大なるクラシック音楽さえもたやすく作ってしまったことである。しかもその音楽構成は、シューベルトやヘンデルに勝るとも劣らぬ出来栄えである。
この事件から2年前に、すでにムーディ・ブルースがロックとオーケストラの融合に成功し、プログレの道を開拓したが、ディープ・パープルはムーディとは全く対照的で、ムーディがロックの中にオーケストラを適度に導入したとするなら、ディープ・パープルは、純度100%のクラシック音楽に純度100%のロックの要素を組み合わせたという感じである。これはまったく新しい音楽体験である。
第一楽章は、前半の本格的なオーケストラ編成楽曲から、中盤に入ってリッチー・ブラックモアの長い演奏に交替。それからオルガン・ソロが入って、すべてが入り交じったクライマックスへと畳みかけるドラマチックな展開がエキサイティングである。オーケストラの古典的クラシックのリズムが、ハード・ロック特有の自由な音楽フレーズに解体されていく様は圧巻である。
|