ハッシュ
Shades Of Deep Purple
1968
Deep Purple

 ロック史に数多くの伝説を残してきたディープ・パープルの記念すべきデビュー・アルバムにして、おそらく彼らにとっての最高傑作である。僕にとってもこの1枚は大切な1枚で、初めて聴いたときの衝撃は今も昨日のことのように覚えているし、いまだに聴いていて飽きない。ビートルズの「サージェント・ペパーズ」、ピンク・フロイドの「狂気」を別格にすれば、僕のiPodの記録ではこれが再生回数が一番多かった。つまり、これは僕の一番の愛聴盤ということになる。

 僕がこのアルバムで好きなところはその曲の重厚さである。名盤「イン・ロック」にはこの重たさはない。クラシック音楽の重たさがそのままハード・ロックになったという感じだろうか。「Hey Joe」のリッチー・ブラックモアのギターなど、かっこいいの一言に尽きるが、一番驚くのはジョン・ロードのキーボードである。僕はこれ以上キーボード然としたバンドと出会ったことがない。他バンドのキーボードはただの補足楽器でしかないが、パープルのキーボードは、そんなレベルではなく、あらゆるものを超越している。「And The Adress」の最初のキーボードには電撃ショックを受けたし、「Mandrake Root」の2:20からのキーボードとドラムのインタープレイ(相互作用)は、もうゾクゾクが止まらない。曲全体から漂うこの何ともいえない荘厳さ。すべてが当時の他のバンドとは段違いに演奏のレベルが高い。
 「Help」はビートルズの曲。ビートルズをカバーすることは、一般には邪道とされたが、ただしディープ・パープルだけは特別ワケが違う。「俺たちだったらこんなにアレンジできるぜ」と誇り高く、アレンジャーとしての才能をアッピールしている。おそらくビートルズをカバーしたバンドの中でもパープルのそれを凌ぐものはない。これが正しいカバーのやり方である。
 しかし、なんといっても「Hush」は名曲だ。すべての楽器が、楽器本来の最も理想的な音を発した、これぞ真のロック・ソングである。この曲だけしても、パープルのその後の活躍ぶりが予感できる。

バンド・アルバム・インデックス
Abandon
Bananas
Battle Rage On, The
Book Of Taliesyn, The
Burn
Come Taste The Band
Concerto for Group and Orchestra
Deep Purple
Deep Purple In Rock
Fireball
House Of Blue Light, The
Machine Head
Perfect Strangers
Purpendicular
Rapture Of The Deep
Slaves And Masters
Stormbringer
Who Do We Think Are


ディープ・パープル偉人伝
ロッド・エヴァンス編

ディープ・パープルの初代ヴォーカリストである。パープルのメンバーの中でも最も過小評価されている人物と言われているが、しかしイアン・ギランやデヴィッド・カヴァーデイルと比べても、僕が聴く限りでは実力にまったく差はなかった。たしかにエヴァンスのままでは今のようなマンモス級の評価を得ることはできなかったかもしれないが、エヴァンス時代もきちんと評価すべきである。とくに「Hush」のヴォーカルは最高である。「ナーナナー」という節は、ちょっと間違えばかなりダサダサになるが、エヴァンスはこれを威風堂々と渋く歌ってくれた。パープルは初代ヴォーカリストのこのユニークさに支えられ、後のイアン・ギランの変化の軌道修正をしたと考えられる。イアン・ギランを語ってロッド・エヴァンスを語れない人に、ディープ・パープルを語る資格などあるまい。