アースバウンド
Earthbound
1972
King Crimson

 普通のバンドなら、スタジオ収録盤とライブ収録盤を分けて考える必要があるが、俗に「ライブ・バンド」と認識されているディープ・パープル、グレイトフル・デッド、キング・クリムゾンなどは、ライブ盤の方がむしろ重要視されており、とくにキング・クリムゾンはロック・シーンに「インプロヴィゼーション」奏法を確立させたことで評価が高い。70年前後は、まさしくインプロヴィゼーション・ブームのまっただ中であった。

 キング・クリムゾンのライブ盤は、ここで紹介する『アースバウンド』も含めて、その収録曲目はスタジオ盤では聴けない曲がほとんどである。それもやはりインプロヴィゼーションを重点としたバンドだからであろう。
 インプロヴィゼーションとは「即興」という意味だが、ジャズでいうソロのアドリブとはニュアンスが少し異なり、不規則的なメロディも許容され、自由度が高い。「21st Century Schizoid」は『クリムゾン・キングの宮殿』のバージョンと比べても、ヘヴィーになっている。「Groon」は異常ともいえる凄まじい音楽構造である。
 ロバート・フリップが全ての音の決定権を握っているものの、楽曲作りにおいては民主的であり、各自に好きなようにやらせているのだという。それだから「Peoria」のようなサックスをフィーチャーした名曲も生まれた。ジャズからヒントを得ているとは思えるが、それでもやはりあくまでロックとしてのアイデンティティが感じ取れる。メル・コリンズはロックにおけるサックス奏法を確立させた偉大なるアーティストであろう。
 僕はクリムゾンのアルバムの中でも、これは一番好きな作品なのだが、問題は録音状態のひどさである。クリムゾンのライブ盤は公式のものでも音がひどいものが多いが、これも音がつぶれていて、もったいない。何しろ練習しているところでテレコで録音したものをそのまま使ったのだという。もっとクリアな音が残っていたのなら、ロック史上最高のライブ・アルバムになったかもしれないが、いやむしろこのひどい音が生々しくて味があるというものだ。

バンド・アルバム・インデックス
Beat
ConstruKction of Light
Disipline
In The Court Of The Crimson King
In The Wake Of Poseidon
Islands
Lark's Tongues In Aspic
Lizard
Power To Believe, The
Red
Starless And Bible Black
Thrak
Three Of A Perfect Pair