クリムゾン・キングの宮殿
In The Court Of The Crimson King
1969
King Crimson

イギリスにおけるプログレッシブ・ロックのパワーは絶大であり、とくに70年代は最もニーズのあったロック・ジャンルのひとつだったといえるだろう。というのも、60年代の天下だったビートルズの「アビイ・ロード」が、得体の知れないこのキング・クリムゾンのデビューアルバムによって、その王座を奪われてしまったのだから。このような重苦しいアルバムが1位になるなんて、今の日本では到底考えられないことであるが、それだけこのアルバムは衝撃的であったのだろうし、70年代はまさにそういう多様化されたロックの黄金時代だったというわけだろう。

しょっぱなの狂気じみた「21st Century Schizoid Man」はキング・クリムゾンにとっては永遠に歌い継がれる名曲。ピンク・フロイドでいうところの「Astronomy Domine」に値する作品であるが、その衝撃度はピンク・フロイドに負けず劣らず。ヘヴィなリード・サックス、歪みに歪んだ激しいヴォーカル。クリムゾン・スタイルの核となるインプロヴィゼーション的なアプローチはすでにここから爆発していた。以前ラジオ番組でジ・アルフィーのメンバーがこの長ったらしい曲を丸まるノーカットで流してくれたが、たしかにこれはじっくり全部聴いてもらいたいという気持ちにさせられる。「Epitaph」は、あまりにも物悲しく、そしてこの上なく美しいが、もっと正統に評価すべき曲は「Moonchild」である。当時、音楽とは常に何らかの楽器が始終鳴り響いていたものだが、キング・クリムゾンは何もない「無音」の世界の美しさを我々に教えてくれた。音のない音楽。まさに究極的音楽革新である。

それまでムーディ・ブルースやピンク・フロイドによって進化を続けていたプログレッシブ・ロックという音楽形態は、このアルバム1枚で完全にひとつのジャンルとして確立されたといえる。

バンド・アルバム・インデックス
Beat
ConstruKction of Light
Disipline
In The Wake Of Poseidon
Islands
Lark's Tongues In Aspic
Lizard
Power To Believe, The
Red
Starless And Bible Black
Thrak
Three Of A Perfect Pair