Let It Be...Naked
Let It Be... Naked
2003
The Beatles

2003年にビートルズの新譜として発売され、大いに話題になったアルバムである。俗に、オリジナルの「レット・イット・ビー」はビートルズのアルバムの中でも"最低"といわれる曰く付きのアルバムで、その主な原因がプロデューサーがジョージ・マーティンからフィル・スペクターに変わったことだと言われている。本当は「レット・イット・ビー」はオーバーダブを排除した一発録音による<ロックの原点回帰>をテーマにして作ったライブ感覚のアルバムになるはずであったが、スペクターがそれを下手に飾り立て、ポップ・ソングとして売り込んだことに、ポールも長年恨みを持っていた。「ネイキッド」はそんなスペクター版を無かったことにして、これが本当のオリジナル・アルバムだといわんばかりに発表した1枚である。

原点回帰というよりは、むしろニュー・アレンジといった方がよく、平気でオーバーダブをやっているところには「ポールはバカか」との批判もあった。たしかに「アクロース・ザ・ユニバース」のアレンジはひどいものだ。しかし、コンピレーション・アルバムとして考えれば、なかなかよくできた傑作といってよい。スペクターの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」の方が良かったというファンもいるが、それはスペクター版が脳にインプリントされているからであって、固定観念を捨てるならネイキッド版の方が上出来なのは明らかだ。スペクター版の「ワインディング・ロード」「アイ・ミー・マイン」は悪臭のするポップ・ソングであったが、ネイキッド版ではそれらが胸のすくロック・ソングに生まれ変わっている。映画「レット・イット・ビー」を見た者にとっては、ネイキッド版のこのアレンジは懐かしい感じもするだろう。

全体的に印象深かったのは、リード・ギター、サイド・ギター、ベース、ドラム、キーボードのサウンドがシャープになって、メロディ主体の楽曲から演奏主体のロックらしい楽曲になったことだ。ビートルズはとにもかくにもメロディ主体のバンドであったから、ギターに関してはクソ扱いされることもあったが、「ネイキッド」では、とりわけジョージのギターが強調されている。髭づらビートルズがどれだけ渋く、かっこよかったか。いかに彼らが真のロック・バンドであったか、60年代を知らぬ若者たちにそれを示してくれたこの新譜の業績は大きい。「ディグ・ア・ポニー」「アイヴ・ガッタ・フィーリング」「フォー・ユー・ブルー」など、ビートルズはかくあって欲しいという願望がそのまま実体化しており、しびれるものがある。

曲順も「ゲット・バック」に始まり、ポールとジョンとジョージのヴォーカルを代わり番こしながら、スペクター版にはなぜか入っていなかった「ドント・レット・ミー・ダウン」も入れて、ラストに「レット・イット・ビー」で締めるところも心憎い演出である。余計な曲を追加せず、アナログ盤サイズの収録時間にとどめたのも正解であった(ボーナスディスクはいらねえ)。僕は、この1枚がきっかけでこのサイトを作ったようなものだ。それだけ好きなアルバムだ。

バンド・アルバム・インデックス
Abbey Road
Beatles For Sale
Hard Day's Night, A
Help!
Let It Be
Magical Mystery Tour
Please Please Me
Revolver
Rubber Soul
Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band
White Album (The Beatles)
With The Beatles