「おせっかい」と「狂気」の傑作に挟まれて、軽くポンと作られたかのような、影の薄いアルバムである。「映画のサントラ」という肩書きを背負わなければならない宿命にあったため、映画を見ていない一般大衆から避けられたのだが、内容だけを見れば他のアルバムにも劣らぬ傑作だと気づかされる。最後の「Absolutely
Curtains」など圧巻である。
とくに「The Gold It's In The...」は必聴。ハード・ロックしまくるギターとドラム・プレイ。ピンク・フロイドにしては珍しく「普通」のロックである。ピンク・フロイドは「Arnold
Lane」でデビューしたときから、現在に至るまで、常に異常を貫いてきたが、唯一「The Gold It's In The...」の1曲だけはまともな楽曲であり、むしろこちらの方こそ異常といわざるをえない。彼らに普通の曲が作れることはこの1曲で証明できるが、それと共に、これは彼らがあえて異常にこだわり続けていたバンドだった証拠ともなり、ピンク・フロイドの偉大さを知る思いである。
このアルバムからシンセサイザーの音も少し聞こえるようになるが、基本は「おせっかい」同様、ギター、ベース、ドラム、オルガンの4ピース・サウンド。ギルモアのギターがこのアルバムからメロディアスになり、叙情性が増したことも特筆に値する。決してこれは代表作ではないが、彼らのアルバムとしてはもっともとっつきやすい1枚であり、軽く作ったサントラと過小評価してはあまりにももったいない名盤である。特に僕はギルモア、ウォーターズ、ライトの3人がそれぞれ自分の持ち味を生かした歌声を聴かせてくれる点で好きである。 |