バーズ
バーズ

 僕はブリティッシュ・ロックびいきであるが、バーズはアメリカのバンドの中でも特別に好きで、ひょっとしたらビーチ・ボーイズよりも凄いんじゃないかとさえ思うときがある。今バーズの初期アルバムを聴くと、その浮遊感とハスキー・ボイスは、何とも言えない魅力があり、これは現在のオルタナティヴ・ロックにも直結していると思わせる。例えばREMはまさに直系という感じであるし、一昔前もバーズそっくりの歌声を持つトム・ペティなどがいた。
 バーズというと、よく「フォーク・ロック」という枠だけで語られがちであるが、僕はその傾向に断固反発する。たしかにフォーク・ロックを創始したバンドではあったが、バーズの芸はもっと多彩である。バーズは1枚1枚で、雰囲気がずいぶんと違う。しかし、かといってアルバム1枚に色々な音を詰め込むビートルズのような雑然としたイメージはなく、「この1枚はこの音」という一貫性がそれぞれにある。「霧の5次元」はすぐれたコンセプト・アルバムだと思うが、これは他の誰よりもいち早くサイケデリック・ミュージックという音楽をヒットさせた記念碑ともいえる。当時はスペースロックと言われたが、あきらかにそれがドラッグを連想させ、放送禁止になったのだという。ドアーズ、エクスペリエンス、ゾンビーズ、ベルベット・アンダーグランド、ジェファーソン・エアプレン、トラフィック、そしてビートルズらそうそうたるバンドたちがやがてサイケデリック・ミュージックに触手をのばしたが、いずれもバーズよりも1歩遅れてしまった。そのため、僕はむしろバーズはフォーク・ロックとしてでなく、サイケデリック・バンドとして評価することの方が重要だと思うのである。アメリカン・ニュー・シネマにバーズの曲が使われるのもよくわかるというものだ。
 以降もバーズはコンセプト・アルバムの問題作を毎回放っていった。未発表曲を寄せ集めた「タイトルのないアルバム」でさえ、かなり充実した内容である。つまり、バーズの歌は、アルバム1枚聴いただけでは聴いたことにならない。どれもアルバム1枚のまとまりはピカイチであるが、その割には過小評価されている気がする。というのも彼らはビートルズとボブ・ディランの二番煎(せん)じという不名誉な称号を得てしまったからである。そもそもロジャー・マッギンの当初の目標はそこであったため、そう評価されざるを得なかった。しかし、今デビュー作を聴き直してみると、すでにビートルズやボブ・ディランとは比較できない、全く違う新しいサウンドを生み出していることに気づく。
 バーズはメンバーチェンジも多かった。おそらく短期間で最もメンバーチェンジの激しかったバンドのひとつだと思うが、その浮動ラインナップがかえって魅力ではある。唯一ロジャー・マッギンだけがすべてのアルバムに参加しており、彼の弾くリッケンバッカーの12弦ギターのその不思議な呪文のようなサウンドは、バーズのトレードマークとなっている。
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ベストフィルム「Eight Miles High」(YouTube)


ロジャー・マッギン (g)
ジーン・クラーク (g)
デヴィッド・クロスビー (g)
クリス・ヒルマン (b)
マイク・クラーク (dr)



Mr.Tambourine Man (65)
Turn! Turn! Turn! (65)
Fifth Dimension (66)
Younger Than Yesterday (67)
The Notorious Byrd Brothers (68)
Sweetheart Of The Rodeo (68)
Dr.Birds & Mr.Hyde (69)
Balad Of Easy Rider (69)
(Untitled) (70)
Byrdmaniax (71)
Father Along (72)
The Byrds (73)

 


ロデオの恋人
Sweetheart Of The Rodeo