ビーチ・ボーイズ
ビーチ・ボーイズ

 ビーチ・ボーイズは、ロックの歴史を語る上では、ライバルのビートルズと並び、最重要バンドにあげられる。ビーチ・ボーイズのメンバーは、ビートルズのメンバーよりも若いのだが、デビューした年はビートルズよりも1年ほど早い(デビュー時は全員未成年だった)。アルバム1枚1枚の完成度の高さももちろんであるが、ビーチ・ボーイズが重要なのは、彼らが世界で初めて、自分たちで作曲し、自分たちで演奏し、自分たちでレコーディングし、成功した最初のロック・バンドだということである。

 ビーチ・ボーイズの主なメンバーは、ブライアン、デニス、カールのウィルソン3兄弟に、従兄弟のマイク・ラヴ、そして幼なじみのアル・ジャーディンが加わった5人である。リーダー格はブライアン・ウィルソンで、主に楽曲はブライアンとマイクの2人が作曲しているが、他のメンバーも作曲・歌の才能があり、実際はほぼ全員が同じ割合で目立っていたように思う。バンド名は、デニスがサーフィンをやっていたということで<ビーチ・ボーイズ>となり、音楽コンセプトもサーフィンを題材に取った(ちなみにデニス以外はサーフィンができない)。デビューしたてのころは<サーフィン>という音楽の一形式を確立するが、当時これほど強烈なビート感覚を持ったグループは他になく、そのノリノリのイカしたサウンドと、美しく、若々しいコーラスで、ビーチ・ボーイズの人気は不動のものとなった。

 サーフィンと共に彼らの音楽のもうひとつのスタイルである<ホット・ロッド>も高く評価された。ホット・ロッドとは車をテーマにした音楽だった。以降、ビーチ・ボーイズはサーフィンとホット・ロッドを二大柱として、アメリカの青春像を象徴する人気ロック・バンドとして音楽シーンに君臨することになる。

 ビートルズが前期と後期に分類されるように、ビーチ・ボーイズもサーフィン時代と「ペット・サウンズ」以降とで、大きくサウンドに違いがある。ビーチ・ボーイズのアルバムはどれもきちんと整理整頓されていて、アルバム1枚1枚の完成度については他に追随を許さないものがあるが、サーフィン時代のノリノリのビート・ミュージックもされど、「ペット・サウンズ」以降の繊細なポエティック・ロックは神懸かり的とさえ言えるだろう。

 バンドのブレインであるブライアンは、ツアーの途中で神経衰弱となり、以降ライブ活動から退くことになるが(代役はブルース・ジョンストンが引き受ける)、スタジオに引きこもって作曲活動に専念した。他のメンバーがツアーで喝采を浴びているころ、ブライアンは一人黙々と曲を作り、「ペット・サウンズ」の構想を考えた。他のメンバーはそのサウンドを聴いて、それがあまりにもビーチ・ボーイズのスタイルとかけ離れているということで、一度は反発するも、同作をビーチ・ボーイズの新作として発表したのだった。アルバムは決してシングルの集まりではなく、ひとつの壮大なドラマだという不滅の法則を立証した「ペット・サウンズ」は、ロック史のひとつのエポックとなった。

 その後、破格の製作費を注ぎ込んだシングル「グッド・ヴァイブレーション」を発表し、全米ナンバー1ヒットを飛ばし、ロックの金字塔を打ち立てる。テルミンなど様々の楽器を導入し、意表を突いた表情豊かな音楽構成で見事なアンサンブルを奏でた同作は、ポール・マッカートニーをして<最高のロック・ソング>と言わしめたのだった。

 ビーチ・ボーイズは一部の音楽ばかりが目立ちすぎていて、革新的な楽曲を見落としがちだが、本当は掘れば掘るほど奥が深く、なかなかに実験的な作品も多く残しており、取り組んだジャンルも多岐に渡る。陰のブライアン、陽のマイクの二つの中心人物を持つロック・バンドといわれているが、ブライアンが中心となって作ったアルバムは、批評家には受けたが、一般人が望んでいたのはかつてのノリノリのビーチ・ボーイズ・サウンドであったため(ベスト盤が1位になる)、やがてブライアン・ウィルソンは完全なひきこもり状態となり、彼一人が内省的な音楽を作り続ける一方、残りのメンバーは積極的にライブ活動を続けていった。83年デニスが溺死してからバンド存続が危ぶまれたが、その後も「ココモ」をヒットさせた。

 88年からブライアンはバンドと袂を分かち、98年実質的なリーダーだったカールが肺ガンで死んだ後、アルも脱退。以後マイクとブルースの2人だけでバンドを存続、05年には来日しフジロック・フェスティバルに出演した。なお、ブライアンは04年、かつて30年前に制作を断念し、発表していればロック史上最高のアルバムになっただろうといわれていた「スマイル」を完成させ、ソロ・ツアーを成功させた。
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ベストフィルム「Fun Fun Fun」(YouTube)


ブライアン・ウィルソン (b)
デニス・ウィルソン (dr)
カール・ウィルソン (g)
マイク・ラヴ (vo)
アル・ジャーディン (g)
ブルース・ジョンストン (b)

※一時的に参加したメンバー
デヴィッド・マークス(g)
ブロンディー・チャップリン(b)
リッキー・ファター(dr)



Surfin' Safari (62)
Surfin' USA (63)
Surfer Girl (63)
Little Deuce Coupe (63)
Shut Down Volume 2 (64)
All Summer Long (64)
Christmas Album (64)
Today! (65)
Summer Days (65)
Pet Sounds (66)
Smiley Smile (67)
Wild Honey (67)
Friends (68)
20/20 (69)
Sunflower (70)
Surf's Up (71)
Carl And The Passions-So Tough (72)
Holland (73)
15 Big Ones (76)
Love You (77)
M.I.U.Album (78)
Light Album (79)
Keepin' The Summer Alive (80)
The Beach Boys (85)
Still Cruisin' (89)
Summer In Paradise (92)
That's Why God Made The Radio (11)

【Live Album】
Concert (64)
Party (65)
Live In London (70)
In Concert (73)
Live At Knebworth (02)
Songs From Here & Back (06)

【Compilation Album】
Stack-O-Tracks (68)
Endless Summer (74)



サーフズ・アップ
Surf's Up