ビーチ・ボーイズは最もアメリカらしいバンドだろう。音そのものもいかにもアメリカの60年代そのものという感じだが、それだけでなく、生き様といい、ファッションといい、「Spirit Of America」「Surfin USA」「California Girls」「The Girl From New York City」などタイトル自体もいかにもアメリカ愛国者といわんばかりだ。レーガン元大統領もビーチ・ボーイズの大ファンだったという。だからビーチ・ボーイズと聞くと、誰しもまずは星条旗のイメージが浮かぶ。
 60年代は海と車をテーマにした歌で一時代を築く。3年間のうちに9枚もアルバムを出すほど創作活動は積極的だった。62年デビューから現在までに発表したオリジナルアルバム枚数は実に30枚を超える。ビートルズと同じく、ロックからサイケデリック、アバンギャルドまであらゆるジャンルに誰よりも早く挑戦したロック・パイオニアでもある。「ペット・サウンズ」から「サーフズ・アップ」までの時期は最盛期で、どのアルバムも人間離れした強烈なインパクトがある。
 ビーチ・ボーイズの醍醐味はなんといってもライブに尽きる。彼らにとってライブはお祭り。とにかく場を盛り上げることにかけては右に出るバンドはいない。トークもまじえてホットで楽しいライブが繰り広げられ、ロックはエンターテイメントだということを教えてくれる。
 メンバーは全員が作曲ができ、各自一人残らずボーカル担当者を割り振ってライブでは賑やかだが、ブライアン・ウィルソンだけはライブには出ず、作曲とプロデュース専門でビーチ・ボーイズの陰の部分を表現している。明暗動静表裏一体の実にユニークなバンドといえる。
 悩み抜いた末、15曲は以下のように決まった。上位3位に未完成「スマイル」のための作品が並んだ。リードボーカルはマイクが6曲、カールが5曲、アルが2曲、デニスが1曲、ブライアンが1曲となった。個人的にはがら声デニスの曲をもっと入れたかった。

「Good Vibrations」
ロック史上最高の曲を1曲あげるとしたら、間違いなく候補に選ばれるであろう。この1曲だけで従来のアルバム1枚分以上の時間がかけられている。テルミン、チェロなど楽器も多彩。様々なパートが次々展開する凄まじい世界。ライブのハイライト。リードボーカルはカール。

「Heroes And Villains」
スリリングでミステリアスでなおかつ陽気でユニーク。その曲構成の斬新さと、ノリの良さでは「Good Vibrations」にも劣らない傑作。途中のカール、マイク、アル3人の鼻歌合戦は感動モノだ。リードボーカルはアル。

「Surf's Up」
ブライアン曰く「天国の歌を作りたかった」とのことで、その言葉に偽りない出来。1曲で3部構成。ブライアン弾き語りによる中盤は限りなく美しい繊細なナンバー。生命の息吹を感じる。やっぱ天才。ファンでなくとも聴くべし。リードボーカルはカール。
「Do It Again」
ビーチ・ボーイズの曲はクセになる曲が多いが、これもまさにそう。2分程度の曲だが、わかりやすいリズムと手拍子、そしてひたすら「ヘイ・ナウ」の繰り返しが気持ちいいこと! しびれるぜ。リードボーカルはマイク。

「God Only Knows」
ブライアンが手がけ、アメリカン・ロックの最高峰といわれるまでになったLP「ペットサウンズ」には傑作ナンバーが多く、どれも思い出いっぱいの名曲ばかり。中でもキュンと感動する曲はこれ。ビーチ・ボーイズには包み込むような温かさがある。リードボーカルはカール。

「Help Me, Rhonda」
ビーチ・ボーイズのノリノリ・ビート・サウンドを、フィル・スペクター風にアレンジしたらこうなった。エコーをきかせた立体コーラスもゾクゾクいい感じ。あいかわらずビーチ・ボーイズはサビのノリが良い。リードボーカルはアル。

「Surfin'」
ビーチ・ボーイズの原点にして、ロックの原点でもあろう。まだ幼い感じがするが、そこがいい。独特な鼻歌のグルーヴ感が好きである。シンプルこそベスト。リードボーカルはマイク。
「Fun, Fun, Fun」
チャック・ベリーを彷彿とさせる手堅くノリノリのロックン・ロール・ナンバー。ビーチ・ボーイズはこういう曲を歌わせたらピカイチだ。ビーチ・ボーイズはコーラスも独特で良かった。ライヴでぜひ聴きたい曲。リードボーカルはマイク。
「Surfer Girl」
ビーチ・ボーイズのモチーフは「サーフィン」であり「女の子」であった。ビーチ・ボーイズのバラードの美しさを存分に堪能できるという点ではこれと「In My Room」がオススメだ。リードボーカルはブライアン。
「Trader」
ブライアンが自室に引きこもってブクブクに太っていた頃、他のメンバーたちがなんとかしなくちゃいけないんだと世界各地を巡業してビーチ・ボーイズの名前を守り続けていた時の、なんだかやたらとかっこいい歌。二部構成の心地よいサウンド。リードボーカルはカール。
「California Girls」
甘酸っぱく清らかなロックン・ロール。出だしが良い。これはブライアン本人がビーチ・ボーイズの曲の中では最も気に入っている曲らしく、一般人にも人気が高い。リードボーカルはマイク。

「Darlin'」
ライブアルバムでいきなり最初に演奏されているように、ガツンと一発気分爽快、荒々しくワクワクする曲だ。それまで培ってきたロックン・ロールも土台にしつつ、ぐちゃっとファンキーに決め込んでいる。リードボーカルはカール。

「I Get Around」
よくぞ作ったという、いかにも「ビーチ・ボーイズだぞ」という感じの名曲。かけぬけるようなエネルギッシュでフレッシュなノリは唯一無二。ブライアンのコーラスが見事。リードボーカルはマイク。
「Forever」
これぞデニスといいたくなるデニスのベスト曲。デニスには他のメンバーにない繊細さナイーブさのようなものがあり、感動的な曲が多い。永遠なれ!リードボーカルはデニス。
「Little Deuce Coupe」
ビーチ・ボーイズといえば車。車の曲ではこれが一番有名。バンドの初期の曲はどれも演奏時間が短く、シンプルにロックンロールしてるとこが気持ちいい。聴けば聴くほどホットで、サビが頭からいつまでも離れない。リードボーカルはやはりマイク。