ピンク・フロイドの凄いところは演奏だ。ギター、ベース、ドラム、オルガンの4ピースだけで、いかにふくらみのある音楽を表現していたか。残念ながら彼らの演奏テクニックを褒めている文章を僕は見たことがないが、それは曲の雰囲気ばかりが注目されているからだろう。「音響ロック」と呼ばれるのもそのためだ。しかし各楽器を個別に耳をすまして聴いてみるだけでも、毎度新たな発見がある。ギターとベースとドラムとオルガンが、同時刻に音を発すると、4ピースとは思えないほどの壮大なふくらみを感じさせる。僕はそこに毎度のことながら必ず感動してしまう。彼らの曲はスタジオ収録バージョンよりもライブ・バージョンの方が面白い。ライブでは二重録音をしない。それこそ4ピース・インストゥルメンタルの無限性を知らされる思いだ。
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「エコーズ」
24分の大作。最初のピアノの1音「ピーン」だけでも鳥肌が立つ。この1曲のために研究書が出版されたほど、奥が深く、何度聴いても新しい発見がある名曲中の名曲だ。

「アランのサイケデリック・ブレックファスト」
これが楽器本来の音の美しさ。ステレオ効果を存分にいかし、随所に配された効果音の音の響きのひとつひとつに魅了させられる。やはりピンク・フロイドはただものじゃないと思った。

「ユージン、斧に気をつけろ」
ギター、ベース、オルガン、ドラム、すべて申し分なしのバリバリのロック・サウンド。ロジャーの叫び声など、凄まじいものがある。ピンク・フロイドの音楽性を最も的確に表しているライブ音源だ。
「神秘」
ピンク・フロイドの最も凄いところは「アナログ」的な音作りである。それを証明する傑作がこれだ。弦を擦ったりエコーをかけたりしてあの不思議な音を作り出しているのである。
「走り回って」
この曲はもともとはギタージャムだった。アナログ的な技術にこだわり続けていた彼らが、とうとうシンセサイザーを導入。これは打ち込みという点では音楽史上最強の1曲だ。音が空間をうねっていく。
「天の支配」
シド・バレットの名曲。ピンク・フロイドの聖典として他の4人もこれを崇拝していたようだ。浮遊感のあるアブナイ雰囲気といい、ドラムやベースの音響のふくらみといい、1曲目にしてはあまりにも素晴らしすぎる。
「太陽讃歌」
ロジャーがリードボーカルを取る曲。ピンク・フロイドのライヴではかなり人気が高い1曲で、必ず演奏される。
「星空のドライブ」
危険なムードが漂うかっこいい曲なのだが、邦題がなんだか冴えない。それまでのロック・バンドとは明らかにギターやベースの弾き方が違っている。天才を感じさせる異常な曲。
「タイム」
ひとつひとつの音の響きが絶妙。最初のパーカッションの残響にゾクゾクさせられ、空間を感じさせるギター・ソロにじーんとくる。メンバー4人全員に見せ場のある名曲。
「狂ったダイヤモンド」
ロジャーがシド・バレットに捧げた曲。デイヴ・ギルモアのギターがとにかく素晴らしい感動を呼ぶ。プログレ然とした曲だ。
「コンフォタブリー・ナム」
ピンク・フロイドの人気をファン圏外にまで広げた曲。ライブでは間違いなくもりあがる。後期ピンク・フロイドのスタイルを集積した代表曲中の代表曲。
「あなたがここにいてほしい」
アコースティック・ギターの弾き語りから始まり、デイヴが切々と歌う名曲。心に響く感動がある。
「クイックシルバー」
これがピンク・フロイドの空間音楽の素晴らしさ。エコー、リバーブを駆使し、まるでオーケストラ音楽のように壮大な広がりを感じさせる。
「ラン・ライク・ヘル」
「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」同様、これもライブでは間違いなくもりあがるので、よく最後に演奏していた。スタジオアルバムではヴォーカルはロジャーだが、ライブではデイヴとロジャーが交替交替に歌っている。
「ふさふさした動物のふしぎな歌」
ミュージック・コンクレートの野心作。楽器を一切使っておらず、つまりは効果音だけで編集した作品。そこがピンク・フロイドの常識離れした音楽センス。