統計的なものだけど、というか、僕が勝手に思いこんでることだけど、バンドにおいて、かすがい的な存在のもの、それはドラマーのような気がする。ドラマーの打ち出すリズムの上に他のメンバーのギターやベースが被さっていくのだから、音楽理論的にも間違いないと思うのだが、ドラマーの人間性ももちろんその理由に含まれる。たいていドラマーというのは、他のメンバーと違って、作曲のセンスがない。しかし、そういうドラマーに限って、最後まで生き残っている(生き残ると書くと語弊があるけど)ことが多いのだ。
例えば、ピンク・フロイド。実はドラマーのニック・メイスンだけがただ一人異動歴がなく、すべてのアルバムに関わっている。しかし、あの中では、ニック・メイスンが一番目立っていないし、彼だけが曲を作ろうとしない。
ディープ・パープルもそうだ。これまでに何度もメンバーが入れ替わっているが、ただ一人、ドラマーのイアン・ペイスだけは最初から最後までずっといる。でもイアン・ペイスは決してスタープレイヤーではない。むしろ縁の下の力持ち的キャラだ。
アブノーマルなのはレッド・ツェッペリンだ。ツェッペリンはバンドにしては珍しく、すべてのアルバムでメンバーが交替していない。このバンドが解散するきっかけとなったのは、ドラマーのジョン・ボーナムが亡くなったことなのは明白だ。ジョン・ボーナムはロック史上最高のドラマーと言われただけに、彼なしのツェッペリンは考えられなかった。
ビートルズも重要である。ジョン、ポール、ジョージが物凄い才能を発揮している陰で、ドラマーのリンゴ・スターだけが、言っちゃ悪いけど、あまり大きな仕事をしていない。でも彼はバンドの最後までそこに残った。途中イジけて抜けようとしたことはあったけど、でもリンゴ・スターがいたから、他の3人もついてこられたのではないかなと思う。その証拠に、リンゴだけはジョン、ポール、ジョージのそれぞれのソロ作品に参加しており、リンゴのソロ作品にはジョン、ポール、ジョージが参加することになったのだから。
あえて一人、僕の好きなドラマーをあげるとしたら、チャーリー・ワッツだ。彼は今もローリング・ストーンズのメンバーとして、太鼓をひたすら黙々と叩き続けている。ミック・ジャガー、キース・リチャーズというスタープレイヤーが前に出てワイワイ盛り上がってるのに、自分は地味に叩き続けて、ちっとも目立っていない。ステージに向かって手を振ることもない。ミック、キースとはまったく対照的だ。それでも彼は脱退しようともせず、クビにもならずに40年以上も仕事を続けている。むしろ彼がいるから、ローリング・ストーンズは続いているのではないかと勘ぐりたくもなる。ミック、キースにとって、チャーリーは無害な存在であって、何も足さず、何も引かずにすむ。だからストーンズは続いているとも考えられる。チャーリーにとっても、ローリング・ストーンズという史上最強の名の下に働けるのだから、本望であるに違いない(それゆえに、チャーリーと比較的同じ位置にいたベースのビル・ワイマンがなぜやめたのか、不可解きわまりない)。
強引なまとめ。ドラマーは、バンドにおいて、最も地味な存在である。これといって演奏的に自己主張できる立場でもない。しかし、ビートが命ともいえるロックには、ドラマーは決していなくてはならないってことだ。
(2007/10/24)
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