イエスは毎年活動を続けて息の長いバンドだ。みんなだいぶ年を取ったのにもかかわらず、出すアルバムは傑作ばかり。01年の「Magnification」さえも大傑作で、まったく衰える気配なし。05年ライブ・アンソロジー「The Word Is Live」を発表し、改めて全盛期イエスは凄いとファンを熱狂させてくれた。メンバーの息があっているかと思いきや、実はメンバーの入れ替えはかなり激しく、これまでヴォーカリスト2人、ギタリスト4人、ベーシスト1人、ドラマー2人、キーボーディスト5人が関わっている。全員テクニシャンで、各自がイニシアチブをとっていた。いつも変わらない演奏を続けているのは目立ちたがり屋のベーシスト、クリス・スクワイアだけ。僕はスクワイアはロック史上最強のベーシストだと思う。イエスはギターとキーボードこそ凄いが、やはりベースの音が際立ってかっこいい。

「And You And I」
10分間の曲だが、まるで20分かと思うほどに奥深い構成。様々な演奏ハイライトがあって大いに盛り上がるので、ステージでは必ず演奏されるほどの定番曲。イエスはやはり最高のライブ・バンドであることを教えてくれるナンバーだ。胸キュン必至。

「Awaken」
邦題は「悟りの境地」。黄金期メンバーによる野心的な大作である。哲学的で東洋的。これぞ構築美学音楽の集大成。アンダーソンいわく、これがイエスの最高傑作だとのことだが、その言葉は本当である。『究極』は荒っぽいアルバムだが、聴くほどに味がある。

「I've Seen All Good People」
覚えやすいフレーズ、ノリやすいリズムと、ポジティブな雰囲気がただよう心地よい2部構成ナンバー。スティーヴ・ハウの軽快なギターと、トニー・ケイのオルガンが素晴らしい。ライブでは「Yours Is No Disgrace」と並び観客みんな巻き込んで大合唱する定番曲。
「Going For The One」
イエスのアルバムの中でも『究極』の1枚だけは何か違う。人間離れしたオーラを放っているというか、何か超越しちゃった感じがある。この曲はアンダーソンのヴォーカルがただただ凄まじい。だんだん昇天していくような感じである。まさに究極。ハウのギターも見事。

「The Gates Of Delirium」
ディスク片面を占領する大作。映画のように感動的。『リレイヤー』に収められている曲はジャム的な「サウンドチェイサー」など、3曲とも会心作といえる出来で、在籍期間は短いが、モラーツのキーボードはそれまでのイエスの演奏法と違っていて興味深い。

「Starship Trooper」
この曲のラストパートはイエス史上最強の傑作だろう。同じフレーズを繰り返す興奮。そこに宇宙が広がる。ライブを重ねていくにつれてフレーズは長くなっていき、ウェイクマンが加入してからはリッケンバッカー、ギブソン、モーグのバトルが最大の見せ場となった。

「Heart Of The Sunrise」
邦題は「燃える朝焼け」。ブラッフォードのドラム・パフォーマンスが熱い。スクワイアのベースは相変わらずゴッツイが、これはスクワイア曰くイエスの最高傑作とのこと。「バッファロー'66」で使われたときには別世界に来たみたいで驚いたね。
「Owner Of A Lonely Heart」
俗に言う<9012イエス>には賛否両論があるが、僕は大好きだ。70年代のイエスと80年代のイエス、どちらが良いか、比較にならない。「ロンリーハート」はやっぱり出だしのギターを聴くとうれしくなるね。そらきたと。メンバーが変わってもやっぱりこの曲は熱いです。

「Close To The Edge」
A面まるまる1面を使った20分弱の大作。ウェイクマンのキーボードとスクワイアのベース、そして何よりブラッフォードのドラムが素晴らしい。僕がイエスを好きになるきっかけとなった壮大なるシンフォニック・ロック。イエスはこの1曲によりプログレの頂点を極めた。

「Roundabout」
イエスの曲では最も有名なナンバー。え?こういう構成なの?といわせるほどに意表をついたユニークな造形美。イエスならではのバカテク・プレイも楽しめる。渋かっちょいい神秘的ロック。「I've Seen All Good People」と共にライブのクライマックスとされる。
「Homeworld (The Ladder)」
後期イエス屈指の傑作。これは真の意味でメンバーが全員一緒に協力しあって共同で作った最初の曲かもしれない。壮大なスケールで宇宙空間が広がっていく。そしてそのなんたる前向きでパワフルなメロディか。たとえ老いてもイエスは健在である証。
「Ritual」
冗長と不評のアルバムだが、噛みしめて聴くと凄い曲だとわかる。邦題は「儀式」。ライブで完全再現ができ、各自にソロ演奏の見せ場があり、5人編成バンドであることの最高の演奏スタイルがここにある。パーカッションをドンドコドコドコ、ライブが熱い大作。
「Wonderous Stories」
シングルで大ヒット。ライブの定番曲ではないが、とても綺麗で心が洗われる曲。NoではなくYesというバンド名に偽りのない心地よいイメージである。ハウのジャズ風ギターとウェイクマンの高音キーボードの美しさにはため息が出るだろう。
「Time And A Word」
古い曲だが、ジョンは好んでイエスのライブ・レパートリーに入れてきた。なんだか映画のテーマ曲みたいな雰囲気の曲。オーケストラをバックに演奏する。リック加入後はリックのピアノがひとつの聴き所となった。
「Don't Kill The Whale」
かなり過小評価されている感があるアルバム『トーマト』からの隠れた名曲。鯨を殺すなというメッセージソングだが、4人メンバーの演奏がガツンと一発かっこいいこと! スクワイアのゴリゴリベースも絶好調。PVではグラサン姿のアンダーソンに惚れ惚れ。