僕はソロよりも、バンドでやってる人たちの方が断然好きである。僕なりのロックの定義は、もう何度も説明したことだが、「自分たちで作曲して演奏すること」だ。つまり、ギターとベースとドラムが揃ったバンド形態でなければ、真のロックとは言えない。

 なぜ僕がソロがイヤなのかというと、「このギターかっこいいなあ」と思っても、演奏してる人がセッションだと思うと、なんだか白けてしまうからだ。でも、バンド形態ならば、たとえばレッド・ツェッペリンなら「ジミー・ペイジのギターってうまいなあ」という風に、ミュージシャンを想像して聴き入ることができる。こっちの方が熱いと思わない?
 僕はビートルズが一番好きだが、ソロになったジョン・レノンやポール・マッカートニーにはあまり魅力を感じていない。あくまで僕が好きなのは「ビートルズ」というバンドであって、ジョンでもポールでもないのである。「イエスタデイ」は実質的にはポールのソロ作品といわれているが、ビートルズ名義で発表しているから価値があるのであって、たとえば、ポール・マッカートニーとローリング・ストーンズはどちらが好きかと聞かれたら、僕は迷わずストーンズと答える。ミック・ジャガーが好きだからではなく、ストーンズというバンド形態が好きだからだ。

 ヴォーカルこそが一番と思ってる人には、これが理解できないらしい。しかしよく考えて欲しい。バンドにおいては、重要なのは、あくまでバンドという連帯感である。だから、ヴォーカルが変わることもざらである。ビートルズ、イーグルスなどは曲ごとにヴォーカル担当者が違う。キング・クリムゾンディープ・パープルは何度もリードヴォーカリストがメンバーチェンジしているが、それでも昔のヒット曲を継承してライブで歌い続けてきた。
 ピンク・フロイドは、リーダーのロジャー・ウォーターズが抜けてからも、ウォーターズが作曲した「ザ・ウォール」を演奏し続けた。ウォーターズ自身もソロとして「ザ・ウォール」を演奏し続け、同じ時期に異なる二つの「ザ・ウォール」が演奏されていたのだが、作曲者のウォーターズよりも、バンド形態で演奏された「ザ・ウォール」の方が圧倒的に人気が高かった。これは、バンド志向こそ、真のロック・スピリッツであることを証明している。
 ビートルズ、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリンは僕の最も愛するバンドであるが、理由をひとことで言うならば、彼らが何よりもバンドらしい連帯感を持ったバンドだからだ。

 ただし、バンドでなくても好きなミュージシャンはいる。ボブ・ディランである。ディランはもともとは弾き語りシンガーだったから、バンドでなくとも十分に存在感があるからだ。(2004/7/4)

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